鎌倉材木座 木造住宅の調査へ

今日は、日曜日であったが、神奈川県の邸園保全活用推進員養成講座の一貫で、鎌倉の建築家の方々計5名で、材木座の木造住宅の調査を行った。平面図からはじまり、断面図(矩計図)、立面図などをその場でスケッチし、寸法を測って記入していくという調査である。プライバシーの関係で、写真などはお見せできないが、鎌倉における昭和初期を起源とする住宅調査であり、数多くのことを学ぶことができた。

興味深かったことを列挙すると、たとえば、台所が1階の南の日当たりのよい場所に位置することであった。通常であれば、居間かあるいは主寝室にしてもよいような位置に台所が位置していた。この理由は、どうも南の庭先に井戸があり、戦前はその井戸から水を汲み調理をしていたらしく、台所がその位置に配置されたということが予測できたことである。つまり、戦前の住宅では井戸の位置と台所の配置は深い関係にあるということ。

また、この住宅は海に近いせいもあり、雨戸と雨戸の間に方立てを立てて、暴風時(台風時)に雨戸のがたつきをなくすような工夫も見られた。各開口部は出巾が600ミリ程度の小庇がついており、そのデザインは、それぞれ角材や丸太などを使い分け、異なるデザインがなされていた。こうした住宅は、昭和30年代頃には鎌倉の地元の大工さんにより増改築がなされていたそうだ。

最後に最も興味深いエピソードを紹介したい。門をつくった大工さんの話だが、作業小屋で仮組みをして、ちゃんと組み立てられることを確認した後、現場に材料を運んできたが、どうしても湿気の問題で材料が膨張し、うまく組み立てられなかった。その大工さんは、そのとき、その場で材料を調整して組み立てるのではなく、湿気が収まるまで何日も待ったという。木材が湿気で膨張したのをその場でごまかして収めることはしなかったというのだ。その場で調整したら、材料に無駄なあそびができてしまうからである。昔の鎌倉の大工さんは、このくらいの余裕をもって仕事をすることは当たり前だったのだろう。

by kurarc | 2010-01-17 21:49 | archi-works