『アールトとフィンランド 北の風土と近代建築』を読む

タイトルの著作(伊藤大介著)を電車の中で読了。

先日ブログでアルヴァ・アールトの家具についてふれたので、アールトについて気になり始め、以前通読していたものを読み返す。本書はアールトについての入門書として優れているが、ここでは特にこの著作の中で興味深かった内容についてメモをしておく。

1)建築家エリック・ブリュッグマンについて
アールトとほぼ同世代の建築家であるが、フィンランドのスウェーデン統治時代の影響を強く受けた建築家(アスプルンドの影響が大)であり、トゥルクの都市を中心に活躍した建築家。アールトとはセンスが異なり、「スウェディッシュ・グレイス」(建築評論家モートン・シャンドの言葉)といわれるスウェーデン的繊細さ(洗練)をもつ建築家だということ。

2)「カレワラ」の東方起源説について
カレワラ」はフィンランドで19世紀中期に編纂、刊行された民族叙事詩であり、ナショナル・ロマンティィシズムを生み出すことにつながったが、この物語の採取された地域であるカレリア地方は、ビザンチンの影響を受けた非フィンランド的文化だったということ。ナショナリズムの中に異文化の混入を認めながら、それらを精神的なよりどころとした、ということ。

3)建築家S・フロステルスによるサーリネンに対する抗議について
ゲセリウス・リンドグレン・サーリネン設計事務所によるヘルシンキ中央駅コンペ案について、S・フロステルスが時代錯誤の案として抗議したこと。この結果、サーリネンらはコンペ案を修正して完成させる結果となったこと。

4)「アアルト」と日本で表記されるが、「アールト」の表記がフィンランド語として自然であるということ。

5)アールト設計のヴィープリの図書館は現在、ロシア領に入ってしまっているため、大きく改造されてしまっているということ。

by kurarc | 2010-11-03 22:51 | books