屋根の形と街並みのデザイン 太田邦夫先生のレクチャー

昨日、工学院大学にて、大学院時代にお世話になった太田邦夫先生による「屋根の形と街並みのデザイン」と題したレクチャーを聴講した。

レクチャーは屋根と街並みとの関係を考えるレクチャーであったのだが、そもそも屋根とは何か、屋根の形、勾配などはどのように決まってきたのかについて、ヨーロッパ、アジア、日本など膨大な写真資料をパワーポイントに落とし込んだものによりレクチャーが進められた。さらに、屋根の形に潜む民族性の話など、屋根の考古学、文化人類学と行っても過言ではないレクチャーで、興味が尽きなかった。

我々は一般的に屋根勾配を雨の量や雪のあるなしによって、たとえば、雪が降る地方は屋根勾配はきつい、と理解しているところがあるが、太田先生の調査によれば、それは間違いであり、同じ雪の量のある地方でも、勾配の緩い都市、きつい都市など気候条件では説明できないことを実証的に説明してくれた。(気候だけでなく、民族性、機能、構法等により決定される。)

また、興味深いエピソードとしては、妻入り(街路からみてのこぎり状に屋根の形が見えるような街並み)の都市は軒先の部分が火災の弱点となることから火に弱く、平入りに(街路方向に屋根勾配がついているような街並み)し、日本のうだつのような防火壁をつくり連続させた都市があるが、逆にこのような修復を拒み、現在まで妻入りで残った都市などに世界遺産が多いことの事例を紹介していた。やはり、妻入りの方が街路から観たときに建物の正面のデザインにインパクトがあるからだという。

2次会の席に移ってからは、屋根の形と平面図との連関やいわゆる直角というものを知らなかった時代に我々はどのような比例や尺度を使っていたのか等々のお話をお聞きし、建築の根源に迫っていくような太田先生の探究心の奥深さに改めて脱帽するしかなかった。

現在、全ヨーロッパの建築ガイドの出版を準備中とのこと。それも10年前から準備が続けられているという。きっと、誰もがつくり得ないオリジナリティあふれる建築ガイドブックになることは間違いなさそうである。

by kurarc | 2011-09-10 19:17 | archi-works