汗をかいた伊勢エビ Lagosta suada

アントニオ・タブッキ著の『フェルナンド・ペソア 最後の3日間』(和田忠彦訳)を再読する。1時間もあれば読んでしまえる小説だが、ペソアに興味のあるものにとって、またリスボンの都市になじみのあるものにとって、この小説は奥深い。

私は偶然、リスボンで暮らしている時、ペソア最晩年の住居の隣の隣の角地にあるアパートを借りた。(グーグルより下写真、右の建物の4階。バルコニーからテージョ河を望むことができた。)台所からは彼の住居の裏庭が望め、その方角から夕日が沈む。その窓から望む夕焼けの美しさは格別であった。この小説の中で、この通り(石のウサギ、とうい名の通り)の角の床屋をペソアはよく利用していたとあるから、ペソアが生きていた頃、私の借りたアパートの1階が床屋だったのかもしれない。(もちろん、建築は今のものとは異なるだろう)私が滞在した頃は、雑貨屋のような店であった。現在、ペソアの住居だった裏庭には小さなレストランがあり、手頃な価格で食事ができる。彼の住居はペソアのミュージアムとして改装されている。(この通りと同じ名前のレストランが、この通り沿いにある。このレストランのポルトガル料理もまた格別)

この小説の中に、いくつかの料理が登場するが、1935年11月29日の章で紹介されるのが、「汗をかいた伊勢エビ」という名の料理である。和田氏はペニケ風・・・と記しているが、多分発音表記の間違いで、ポルトガルのペニシェという漁港の漁師の料理と思われる。

下にレシピをのせておく。

・バター
・タマネギ3
・トマト
・ニンニク少々
・オイル
・白ワイン
・火酒少々
・ニ杯の辛口ポートワイン(白と思われる)
・唐辛子少々
・胡椒/ナツメグ
・伊勢エビは軽く蒸しておき、以上の材料を入れ、オーブンへ


*この小説は、ペソアが自宅から病院へ行き、息を引き取るまでの3日間を描いた小説。彼の自宅がリスボンでは高台にあり、病院へは、コンブロ通りを経てリスボンの中心へ向かって下降していくイメージを描いている。こうしたイメージはリスボンを知るものでしか想像できない。

*和田氏は小説のタイトルを「最期」ではなくなぜ「最後」にしたのだろうか?
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by kurarc | 2012-06-28 19:25 | gastronomy