稲村ケ崎の住宅を鎌倉市の第5回景観づくり賞へ応募

鎌倉市で2年から3年に一度、景観づくり賞を選定するイベントを行っている。私は第2回の委員を務めた。(私の頃は景観アドヴァイザーといわれていた。現在は景観形成推進委員という。)

第5回となる今回のテーマは「古い建物を活かした鎌倉の暮らし」である。今年ある賞をいただいた稲村ケ崎の住宅をこの賞に応募することに。クライアントの方からも許可をいただいた。

この稲村ケ崎の住宅は、築70年を超える住宅のリノベーションだが、それは単なるリノベーションにとどまらない。鎌倉や湘南、三浦半島までの文化を掘り起こし、この住宅のデザインの中に取り入れているのである。

横須賀にわずかに残る海上でのイワシの畜養。そして、その杉材でつくられた生け簀材料の再活用。横浜、鎌倉や横須賀に数多く残るブラフ積みといわれる遠くフランス(フランドル)にまで連続する石積み方法とそれをデザインにとりいれた土間。玄関から(あるいは外部から)浴室に入ることができるような湘南特有のプランニング等。

リノベーションがテレビなどで盛んにとりあげられるようになったが、その方法が文化を掘り下げて行われることはきわめて少ないが、稲村ケ崎の住宅は、鎌倉を中心とする湘南、三浦半島の文化まで掘り下げながら仕事をまとめられた希有な事例である。

この住宅が賞をとれないはずはないのである。

*こうしたコンセプトにまとめられたのも、クライアントの方の要望や議論の成果である。我々にとってクライアントとは、年齢、性別に関係なく、自己の殻、世界をやぶってくれるような教師なのである。

by kurarc | 2012-11-03 22:18 | 鎌倉IS-House