窓辺の花

電車に乗り、車窓からの眺めでいつも気になるのは樹木と建築の窓である。

特に建築の窓を見ていると、貧しいデザインのものが多い。バルコニーなども無味乾燥な手すりが多く、そうした窓辺に花を飾っている姿はごくまれにしか見受けられない。庭をもつ住宅はもちろん手入れされた植物を見かけることが多いが、2階以上の窓辺に植物を街路や外部にむけてきれいに飾っている住宅やマンションを見かけることはほとんどない。

一つには、鉢植えなどを置けるようにあらかじめデザインされなければならないので、コストがかかることもあるが、設計者自身(クライアントの方も含めて)が窓辺に花を飾ることを全く意識していない場合が大半だと思われる。モダニズムの洗礼を受けた建築家たちは、そうした「余計」と思われるデザインをしたがらないこともあるだろう。

窓辺に花があると何がよいかというと、その場所での生活が外部に溢れ出て、都市に生の息吹が発せられることである。単なる窓が開いているだけでは、そこに住んでいるのかいないのかすら判断できない。

4月に竣工した門前仲町の住宅では、私にとって窓辺について意識的にデザインできた最初の事例かもしれない。特に門前仲町の住宅では1階レベルに庭を持てなかったこともあるが、窓辺に花を飾ることができるという都市住宅としての当たり前のルールを実行できたのは幸運であった。こうしたルールが周辺の住宅に波及し、その通りが花であふれてくれれば、環境は一変するはずである。

by kurarc | 2013-06-26 22:28 | design