建築家ルイス・I・カーンの歩き方

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建築家ルイス・I・カーンのドキュメンタリー映画『マイ・アーキテクト』をDVDで鑑賞した。実はずっとみることをためらっていたDVDであったが、今年はカーン没後40周年ということに気がつき、みることにした。なぜ、みることをためらっていたのか、それは、おおよその内容の見当がついていたからである。

正妻のほか、2人の女性に私生児を生ませた建築家であり、その神がかった建築理論など、彼の神話的な言説には事欠かない。そうした建築家の軌跡を残された私生児の一人である息子ナサニエル・カーンがたどって行くドキュメンタリー映画である。

おおよそ予想された内容であったが、予想を裏切られたのは、そのカーンの生の声や彼の歩く姿であった。彼の生身の姿を今までみたことはなかったから、映像から感じられる彼の言動について全く意識していなかったのである。

最も印象に残ったのはカーンの歩き方であった。小柄な身体を少し左右にふるように大股で歩く。その歩き方はなんとも「明るく」、ポジティブなのである。彼は常に闘う建築家であったが、その生き方に少しもブレがなかったのだと思う。そして、建築がなにより好きであったことが、その歩き方ににじみ出ていた。

もう一つ、カーンの最高傑作は、キンベル美術館であろう、と勝手に思っていたが、そうではなく、ダッカの国会議事堂である、といういことがわかったことである。建築をつくるということはどういうことなのか、この仕事はあらゆる建築家に問いかけているといってよいだろう。建築とはテクニックでもなく、きれいなディテールでもない、この建築をみよ、とカーンはダッカの国会議事堂で訴えているのである。

by kurarc | 2014-11-16 21:23 | architects