春は「よもぎ」の香りから

春は桜で感じる、というのが一般的なのだろうが、その感覚、感性は日本の各地によって様々である。ミモザの花や桃の花で感じる地域もあれば、でいごの花で感じる地域もあるだろう。

わたしは、桜でも感じるが、「よもぎ」の香りで春を感じる。大学を卒業し、沖縄の建築家、末吉栄三さんの事務所に働きはじめて3日目くらいのこと。那覇、前島にある「ふみや」という家庭料理屋で、「フーチバ(クファ)ジューシー」(よもぎ入り炊き込み御飯、「フーチバ」はよもぎの意)と「イナムドゥチー」(甘みのあるみそ汁)をご馳走になった。その味はいつになっても記憶から消え去ることはなく、沖縄に行く人にはかならずこの店に立ち寄ることを薦めている。(沖縄では初夏といってよい時期であったのだろう)

先日、静岡産のよもぎが手に入ったので、自分でつくってみたが、沖縄の風味にならない。よもぎの種類が異なるためであるらしい。銀座の沖縄食材店「わしたショップ」に沖縄のよもぎが販売されているようなので、次はそのよもぎでつくってみようと思っている。

通常は、「ジューシー」と略されるが、これには2つあって、炊き込み御飯の方は「フーチバ・クファジューシー」で、雑炊の方は「フーチバ・ヤハラジューシー」と言う。

春を感じるのは桜だけではないという感性は、非常に重要である。日本は多様なのである。

by kurarc | 2015-03-29 11:36 | aromascape