木靴

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昨日、アンスティチュ・フランセ東京に行ったのだが、その目的は、ジャック・ドゥミ監督のDVDを借りることが主目的だった。『ローラ』を借りたいと思っていたが、見当たらなかったこともあり、『ジャック・ドゥミ短編傑作選』というDVDを借りてきた。

ドゥミの最初期の短編映画を集めたものだが、その中に、彼の最初の映画といってよい『ロワール渓谷の木靴職人』という秀逸な映画が含まれていた。この映画は、ドゥミの故郷ナント近郊シャペル=バス=メールに住まう木靴職人の日常生活をドキュメンタリー風に描いたもの。

その描き方が映画として秀作であることにも驚いたが、わたしはこの「木靴」という靴にも興味をもったのである。映画では木靴職人が丸太から木を靴のかたちにきれいに鑿を用いて成形していく過程が丁寧に描かれている。まず、興味というか疑問をもったのは、日本でなぜこのような靴のかたちが生まれなかったのだろうか、ということだった。その後、下駄も日本の木靴といってよいものであることに気がついた。

木靴は湿気を吸ってくれ、日本のような多湿の気候であっても快適に使用できそうな靴であるが、日本では、足を穴に入れるような造形に発展しなかったことになる。(まだよく調べた訳ではないので、日本にも木を靴のように加工した事実はあるかもしれない)wikipediaなどで調べてみると、世界各国に様々なかたちの木靴があることがわかる。オランダでは、こうした木靴は再評価されて、使用する人も増えているという。

よい映画には多くの副産物が含まれる場合が多い。映画だけでなく、そこから派生する様々な事柄を学ぶことができるのである。
(写真:フランスの木靴 Sabot サボ。映画でもこのようなかたちのものがつくられていた)

*日本語のサボる、はこの木靴の意味のフランス語から派生したサボタージュの「サボ」が語源だという。

*ドゥミはこの映画が評価されて、グレース・ケリーとモナコ皇太子との公式記録映画への協力を要請されたという。

*日本にも「浅沓」(あさぐつ)という靴のかたちをした木靴(大半が和紙によりつくられているもの、桐をくりぬいてつくるものなど様々)が存在していることがわかった。やはり、木靴は普遍的な造形なのだ。

by kurarc | 2015-12-07 21:25 | design