花田清輝著『復興期の精神』から30年

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わたしがヨーロッパ、特にルネッサンス人に興味をもつようになったのは、花田清輝著の『復興期の精神』の力が大きい気がする。この著作を初めて読んでから、およそ30年が過ぎていた。講談社文庫のこの著作の終わりに、読了した日付を記しているが、その最初が1986年12月18日となっていた。25歳のときである。

なぜ、この著作を手に取ったのか、全く思い出せないが、ちょうど、沖縄滞在から東京に戻り、1年が過ぎようとしているときであり、父が病に冒されていることを知った頃と重なる。父が亡くなり、そのおよそ二ヶ月後の1987年12月21日に再度、読了している。そういう時期に読んだこともあり、強烈に印象に残っているのかもしれない。

30年経った現在でも、思い出しては、気になる章を拾い読みする。不思議なことではあるが、この中に登場するルネッサンスを中心とし、その時代以後の累々たる人物たちによく出会うのである。気がつくと、花田のこの著作の中に登場している人物なのだ。最近では、ヴィリエ・ド・リラダンに出会った(再会した)。

花田清輝が37歳で発刊した著作であるが、ペダンティックな内容と領域の広さに驚かされるばかりでなく、戦時中に著されたにもかかわらず、その自由なレトリックはいまだにと生き生きとして、いつ読んでも新たな発見がある。その後の学説により、若干の事実誤認はあるものの、人物の確信をとらえた軽妙な文体とユーモア、エスプリは、現在においても新鮮である。

もしかしたら、この著作の中に、わたしのすべてがあるのでは、と思わせるような、わたしにとって最も重要な一冊である。

by kurarc | 2016-08-08 22:37 | books