映画『冬冬の夏休み』

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仕事帰り、早稲田松竹(高田馬場)にて、候孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の映画『冬冬(トントン)の夏休み』をみる。早稲田松竹は高田馬場に残るいわゆる名画座。久しぶりに訪れたが、内部は改装され、椅子も大きめの余裕のあるシートであり、名画座にしては、落ち着いて映画を観ることができた。最終上映は、800円であるからなのか、観客数も老弱男女問わず、60%以上は埋まっていたように思う。

候孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の映画は、『恋恋風塵』、『悲情城市』の二つが特に好きであり、わたしの映画のベストテンの中に二つとも入る映画といってよい。今回、『冬冬の夏休み』は初めて観たが、先の2作に先行する映画であり、映像、シナリオは荒削りなところもあるが、候孝賢の映画の原石のようなものを感じた映像であった。

また、この映画が製作された1984年は、わたしが初めて台湾を訪れた年と重なり、その台湾の映像がなつかしかった。台湾では、夏休みに入る前が、学期の終わりであるという。この映画は、その学期が終わり、ある兄妹がおじいさんの家で暮らす夏休みのひと時を描いた映画である。瑞々しい台湾の光景が眩しい映画であり、その光景は、沖縄や日本の光景と重なりながらも、微妙に異なる。

詳しく語るのはやめるが、この映画に登場する狂人のような女性を挿入したシナリオに、並々ならぬ候の才能を感じた。この女性を映画の全体に登場させることで、この映画のストーリーは、映画としてのリアリティを確かなものにしている。今度はDVDで、ゆっくりと味わいたい映画である。

*原作・脚本の朱天文(チュー・ティエンウェン)の母方の祖父の家で、実際に医院だった日本家屋がロケ地として使われた。外省人の父親と本省人(客家系)の母親を持つ朱天文の体験が元になっている。(Wikipediaより)
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by kurarc | 2016-09-03 00:07 | cinema