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『ラテンアメリカ十大小説』(木村榮一著)を読む

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20世紀の間にやり残したことの一つは、ラテンアメリカの文学作品をあまり読んでいないことである。ボルヘスやコルタサルといった作家の短編をかじった程度。そもそも小説(特に長編小説)が苦手ということもあり、手を出さなかったが、今更ながら後悔している。そういう経緯もあり、木村氏の概説書を手に取った。

タイトルは十大小説となっているが、それだけではなく、70〜80くらいの小説を概説、案内してくれている。大学院時代にお世話になったM先生が、ボルヘジアン(ボルヘスの熱狂的なファン)であったこともあり、ボルヘスのみは特に注視していたが、コルタサルは、アントニオーニの映画『欲望』から興味を持った。

この本で特に興味深かったエピソードは、ガルシア=マルケスの祖母がスペインのガリシア地方の出身であり、マルケスの子どもの頃、ケルト系民話、神話(ガリシア地方はケルト民族の影響が大きい地域である)を話してきかせたということである。木村氏によれば、マルケスの祖母は、「死者や亡霊の出てくるぞっとするような話やきみ悪い話と現実にあったことをまったく区別せず、ふだんと変わりない口調で話した」。この話し方のスタイルが、後にあの『百年の孤独』という小説を生み出すヒントになったということである。この話から、改めてケルト民話(神話)とはいかなるものかについて興味が湧いてきた。

また、マヤ文明について、わたしは、マヤ自体もスペインに征服されたという先入観があったが、そうではなく、木村氏によれば、13世紀の頃、高度に構築された都市文明を捨てて、マヤ人たちは森へと住処を移動させたということである。つまり、現代の我々に照らし合わせてみれば、東京という大都市を捨てて、山奥の原始的生活(日本ではすでに不可能)に回帰したということらしい。それがなぜだったのか?興味は尽きない。

中南米の世界は、未だに古代から現代までの生活が生きており、アフリカの神話的世界(さらにインディオの世界)がユダヤ・キリスト教世界と対峙し、ユダヤ・キリスト教世界の時間概念とは異なる円環的時間と宇宙、現代では考えられないような魔術的世界(日本人が考えつかないような超現実)が体験可能であるということ、20世紀の中南米文学者はそのことにいち早く気づき、文学世界に昇華させたのである。

彼らの文学に触れない限り、20世紀は終わらない、ということなるのかもしれない。

*調べてみると、マヤも一部はやはりスペイン人に侵略されているようだ。木村氏の書き方は誤解を招く。




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by kurarc | 2017-07-13 22:10 | books
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