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by S.K.

ジョビン 『inédito』(イネーヂト)を聴く

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このCDをこのブログで取り上げたのは、ちょうど7年前になる。この季節に聴きたくなるCDなのかもしれない。

ジョビンの数多くのCDの中で1枚を選べ、と言われたらわたしは迷わずこのCDを推薦したい。もともとジョビンの還暦を祝ってプライベートで制作されたCDであったというが、そのクオリティーの高さに驚かされる。家族や知り合いのミュージシャンが何気なく集まってこうしたCDをつくってしまうというのは、驚かざるを得ない。

”inédito"とは、ポルトガル語で「未発表の」といった意味で、このタイトルには、ジョビンの優しい知性が感じられる。”inédito"にはもう一つ、「前代未聞の」と言う意味もある。つまり、未刊の作品の中には、その秘めた可能性が含まれているということなのだと思う。こうした意味の対照はポルトガル語らしい。一見、消極的に感じられる意味の中に、実は人には伝わりにくいが、ポジティブな意味が隠されているということである。

このCDの3曲目、わたしの大好きな曲”sabiá"(サビア)という曲の歌詞は、「戻ること」、「還ること」を歌う。人は「行くこと」、「進む」ことに積極的な意味を感じとると思うが、ここでは「戻ること」の意義を歌う。どこに戻るのか?それは歌詞の中にあるように、「自分のいるべき場所」へ戻ることだと。自分のいるべき場所にいないのなら、戻り、還ることをが必要だというのである。それは”voltar"というポルトガル、ブラジル人の好きな単語で表現されている。そしてこの曲では、”sabiá"(サビア)という小鳥のさえずる場所へ還ることが本来の自分の場所だと歌うのである。

”sabiá"(サビア)というポルトガル語は、ポルトガル語を知っているものには、もう一つの動詞を思い浮かべる。”saber"という動詞であり、”sabia" (アクセント記号がとれる)とは、この動詞の不完全過去形で、「(ずっと)知っていた」を意味する。ずっと以前から知っていた場所、すなわち、自分の場所に戻ること、をこの言葉の中に含ませているのかもしれない。

このCDにはすべて国安真奈さんの訳詞が付け加えられているのもよい。ジョビンの歌った世界の理解に役に立つ。それにしても、なんと優しい音楽なのだろう。


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by kurarc | 2017-10-18 19:49 | music
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