映画『talk to her』

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アルモドバル監督の映画『talk to her』を15年ぶりくらいに観直した。劇場で公開されたときに観て以来である。こんなにも素晴らしい映画だったことまですっかり忘れていた。

ピナ・バウシュの舞台『カフェ・ミュラー』から始まるこの映画は、最初から最後まで、涙の意味を問う主題が貫かれ、その中に、様々な愛のかたちが挿入されている。二人の昏睡状態になった女性が対比して描かれるバロック的映画。

途中、エリス・レジーナの声とカエターノ・ヴェローゾの生演奏がスペイン映画を異化、映画の色彩もスペインらしい。そして涙。ここではアルモドヴァル監督が述べるように、涙は悲しみではなく、「美は痛みたりうる」というコクトーの言葉からインスピレーションを得た「美しさに対する涙」であり、「痛みに似た感情」としての涙が表現されている。「人はあまりに美しいものに出会うと、喜びよりむしろ痛みに近い感情から涙があふれてくる」、そのようなアルモドバルの思いが映画の中で表現される。

昏睡状態の一人を演じるレオノール・ワトリングが輝いている。チャプリンの娘ジェラルディン・チャプリンも重要な役で登場し、映画に深みを与えている。泣く男、マルコを演じたダリオ・グランディネッティとワトリングの看護師役ハビエル・カマラも絶妙の配役。傑作といえる映画である。

by kurarc | 2017-10-23 23:11 | cinema