フォールディング・ファニチャー展記録集

武蔵美で行われていた椅子学講座最終日に、島崎信先生より紹介のあった『フォールディング・ファニチャー展記録集』を古書籍で購入した。1989年に開催された折りたたみ家具の展覧会の記録集である。折りたたみ椅子、折りたたみテーブルなど計162の家具がまとめられている。

日本には折り紙など折りたたむ文化が根付いているが、折りたたむことはもちろん普遍的な様態であるから、世界各国に様々な折りたたみ家具が存在する。日本では、新居猛氏の一連の家具が折りたたみ家具では知られている。

島崎先生の講義でも明らかにされたが、折りたたむたたみ方は、大きく4つの方法、「前後」、「左右」、「中心」、「多方向、その他」に分類される。家具によっては複雑なたたみ方になり、日常的な使用には不都合が生じるものもある。折りたたみ方が容易であり、折りたたんだ時に自立するものであればなお良いということになるが、なかなか自立するものは少ない。

家具のデザインでも同様だが、折りたたみ方にもデザインのセンスが現れる。コーレ・クリントのデッキ・チェア、プロペラ・スツールやモーエンス・コッホのフォールディング・チェア、ポール・ケアハン(ケアホルム)のフォールディング・スツールなどは、その中でも突出したデザインといってよいだろう。

わたしも事務所でイタリア製の安価なフォールディング・チェアを使用している。注意が必要なのは、フォールディング・チェアの場合、台代わりに乗るような使用法は避けることである。乗った時に折りたたまれてしまうことがあり、非常に危険だからである。

日本の座布団なども移動可能な調度品であるが、そうした調度品に近いフォールディング・ファニチャーを深化させることは、日本人のスペースの使い方に合致するものであり、今後もさらに研究が必要な分野と言えるだろう。


by kurarc | 2017-11-16 13:27 | design