『映画の天使』 宮川一夫、淀川長治対談集

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黒澤映画『羅生門』や溝口映画の『雨月物語』、『近松物語』のカメラを担当した宮川一夫氏と映画解説の淀川長治氏の対談集を正月早々読了。1時間もあれば読める対談集である。

昨年は映画の音楽に注目したが、今年はそれだけでなくカメラワーク、さらに原作、脚本など映画づくりに関連する諸々の作業を学んでいきたいと思っている。

宮川氏は世界の名だたる映画監督たちが尊敬するカメラマンである。この書物の題名は、ヴィム・ヴェンダースが黒澤監督の川喜田賞受賞パーティー席上で二人を見て、「東京の天使」と言われたというエピソードから名付けられたという。宮川氏がカメラワークを担当した映画はわたしの好きなものばかりなので、どのようなカメラワークの考え方で映画をつくるのか知りたかったのである。

この対談集ではカメラの手法についてはあまりふれられていないが、『雨月物語』の船のシーンは船を動かすのではなく、カメラをクレーンで吊って動かすことで、船の動きを表現したことなど、苦労話が語られている。

宮川氏は溝口の映画では『西鶴一代女』が凄い、と言っていて、これはわたしと同感であったので驚いた。しかし、カメラを担当したのは宮川氏ではなく、平野好美氏であるという。この平野氏はその後、消息が不明ということらしい。(昨年は近松に着目したが、今年は西鶴か・・・)

映画はいまやわたしの趣味を超える存在となっている。映画を見続けるのはもちろんわたしの本業である建築の糧となるからであるが、今年は映画をさらに深く理解できるよう、数多くの名作、傑作に出会えることを楽しみにしたい。

by kurarc | 2019-01-01 19:19 | books