ドキュメンタリー映画『スケッチズ・オブ・フランク・ゲイリー』

ドキュメンタリー映画『スケッチズ・オブ・フランク・ゲイリー』_b0074416_21514417.jpg


カナダ生まれ、アメリカの建築家フランク・ゲイリーの自伝的なドキュメンタリー映画をみた。ロシア(父)やポーランド(母)のユダヤ系の血をひいていることもあり、かなりの苦労人であることを知った。

彼のインタビューを交えてのドキュメンタリー映画であるが、正直で率直な物言いは好感が持てた。先日紹介したフライ・オットーの建築もそうだが、ゲイリーの建築も日本人の感性からは生み出されそうもない建築と思われるが、彼は、建築家になる前、陶芸を学んでいたことを知り、その造形力はそうした彼の生い立ちが影響しているように感じられた。また、破産寸前になったり、同僚からバカにされていたりと当初から恵まれた建築家ではなかったことを知る。彼は初めの奥さんと離婚したが、その奥さんに名前を変えるように言われ、現在のフランク・ゲイリーという名になったという。そうした、隠しておいたほうがよいようなエピソードも、笑いながら話すゲイリーの懐の深さにも感心した。

映像中で、彼の要望を模型にする所員の姿が映されていたが、正直、かなり理不尽な要望で、所員も辛そうであったが、ゲイリーはむしろ収まりの悪い建築を求めているようなところがあり、驚く。こうした建築のつくり方は、日本のような雨の多い気候ではなじまないだろう。彼は、クライアントを大切にする建築家でもあるようで、よいクライアント(ゲイリーの建築に理解のあるクライアント)にはよい建築ができるという信念を持っているという。だからといって、事細かにクライアントの要望を聞き出すようなことはしないらしい。彼なりにクライアントの考えを察し、それをカタチに反映させるということである。こうした考えは、建築家が中心となって進めるべきといった普通の建築家の感性とも異なっている。

ゲイリーのような建築は私には到底できそうもないが、彼から学ぶべきところは、先入観を持たないで仕事に取り組むというところだろうか。

by kurarc | 2020-01-22 21:56 | architects(建築家たち)