ミレニアム・ブリッジの揺れ もう一つのミレニアム・バグについて

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2000年6月10日、ロンドンのミレニアム・ブリッジが一般公開された。この橋は、著名な建築家ノーマン・フォスターとオブ・アラップという世界的に著名な建築構造事務所により設計されたものである。

「光の刃」と呼ばれた橋のデザインは美しく、誰もがその橋を渡り対岸へ行きたいと思うような橋だったに違いない。しかし、この橋に思わぬ問題が発生した。横揺れの問題である。数百名のロンドン子がこの橋を渡り始めた時、S字型の振動と水平方向に揺れ始めたのである。歩行者は危険を感じ、手すりにしがみついたという。

この現象が奇妙なのは、数百人のロンドン子はランダムに歩行しているにもかかわらず、その揺れは一定の周期を帯び、増幅すらしていったということである。

その原因をつきとめるための調査では、毎秒1サイクルで揺らしたところ、同じような揺れが生じることが判明した。毎秒1サイクルとは、人間が普通に歩く周波数の半分、つまり、人間は通常1秒に2歩のペースで歩くのである。

さらに、人間は歩行する時、わずかながら足を地面に下ろし、蹴り上げる時、水平方向の力をを生じさせているのである。エンジニアはこのようなことを誰も想定していなかったし、また、揺れ始めた時、揺れをかわそうとしてどうもランダムと思われた人間の足並みは同期してしまい、その力が合わさり、大きな揺れが引き起こされることもわかってきた。(以上、『SYNC なぜ自然はシンクロしたがるのか』、スティーブン・ストロガッツ著より)

現在、問題となっている新型コロナ・ウイルスも、こうした同期現象となんらかのかたちで関連していく可能性は十分に考えられる。都市の中で、ランダムに歩行する人間であっても、どこかでその接点が重なり、「大きな揺れ」(オーバーシュート)になることを想定しておかなくてはならないだろう。

by kurarc | 2020-03-24 17:34 | books(書物・本)