『Pippo the Fool』を読む

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イタリア・ルネッサンス期の建築家、フィリッポ・ブルネッレスキによるフィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレのドーム建設をテーマとした絵本を原書で読んだ。

実は、この原書を読み、翻訳して出版したいと思っていたが、すでに訳されていたことを今日、気がついた。訳者の方は、何冊もの翻訳書を手がけている方で、やはり、訳すべき書籍への臭覚はするどい方なのだろうと思った。

主に、ロス・キング著の評伝を種本として創作された童話だと思うが、童話だけに、ブルネッレスキの逸話の中で、汚らしい部分は表現されていない。実は、こうした汚らしい部分こそ、ブルネッレスキ自身のリアリティを伝えるためには重要なのだが、そうした真実を省略するしないは作者の選択、意志に任せるしかない。

どのような訳文になっているのか気になるので、訳された絵本(古本)を今日注文することにした。わたしが疑問に思われる箇所などどのように訳されているのか学習したいと思っている。

この絵本は特にイラストが優れている。文章の内容がイラストによってうまく表現されているのである。しかし、著者とイラストレーター、両者ともにイタリア人ではない。イタリアにおいて、ブルネッレスキは自明な建築家だから、こうした絵本をつくろうと思う作者は現れなかったのかもしれない。

わたしがこの絵本に着目したのは、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロは日本で人口に膾炙されているが、ブルネッレスキは知名度が低いと思われたからであり、レオナルドやミケランジェロと同等の、あるいはそれ以上に重要な建築家であり、藝術家であると思っているからである。それにしても、今度翻訳を手がけようと思うときには、あらかじめ訳書が出版されているか確認した上で、読むことにしたい。

by kurarc | 2020-05-05 14:40 | architects(建築家たち)