蝶について

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わたしの学んだ都立高校の校長、春田俊郎先生は蝶や蛾の研究者であった。高校の校章はオオムラサキという蝶(国蝶)で、春田先生が子供の頃は、東京でも見られた蝶であったという。

最近、復刊した動物行動学者の日高敏隆氏の著書『ホモ・サピエンスは反逆する』のなかで、日高氏が蝶の生体に対する概念が変わるような経験を描いた章がもうけられていた。蝶は毛翅類(もうしるい)の中で、昼行動する。夜行動する蛾とその点が異なる。昼行動する蝶は光が重要であり、視覚が発達している。蝶の羽など色彩に富んでいるのもそのためだという。反対に、蛾は嗅覚が発達している。オスの蛾はメスを探すのもメスの性誘引物質を手がかりとするという。

日高氏は、ある山で蝶を観察している時、悪天候の中、わずかな晴れ間に蝶が必死で花にとびついて蜜を吸っている姿に感動したという。蝶は優雅な昆虫のように思われるが、そうではない。日高氏は、常に自然と闘いながら命を維持していることを目の当たりにしたのだ。

蝶の生活環境に関する興味深い文も掲載されていた。蝶を人工的な環境の中で育てることの難しさについてである。それは人間の環境を考えるときにも参考になる。たとえば、アゲハチョウを飼育するためのケージをどのようにしたら、繁殖できるまでの環境になるのかについて、かなり苦労したらしい。空間の大きさ、光の入れ方、そしてなによりも大事なのはそよ風であった。自然のなかで常に空気は動いている。その動きを温室でも再現しなければ、蝶はうまく飛び立つことができないのである。

多摩動物公園には、昆虫生態園があり、温室の中で蝶が観察できるようである。この連休中、時間がつくれれば何十年ぶりにもなるが、動物園に行き、蝶がヒラヒラと舞う姿を見たくなった。もちろん、自然の中で見ることができれば、それが一番である。

by kurarc | 2020-07-22 21:23 | nature(自然)