中条省平著 『世界一簡単なフランス語の本』を読む

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フランス語の学習を始めたのは4年ほど前である。フランス映画の理解のためであった。はじめは、フランス人の女性に月2回ほど、神楽坂のカフェで1対1で習っていたが、途中、病気でやめてしまった。モデルのように美しいフランス人女性でモチベーションも高かったっが、その美しい顔をときに歪めるように、発音を修正された。よく、日本人だから発音は通じれば良いなどという語学の先生がいるが、それは間違いである。発音は日本人であろうとなるべく正確に発音できるように訓練すべきで、それでもネィティブのように発音できる訳はないのだから、それはあきらめる、ということだ。

中省氏の本を読もうと思ったのは、2年ほど前にテレビで放送されたカミュ作の小説『ペスト』の解説に関する再放送を聞いてからからである。カミュの小説の力ももちろんあるが、コロナ以前のにこれだけ感染症について起こり得る人間模様についてシミュレーションした中省氏の解説の明快さにも感心したからである。中省氏は相当、フランス語に造詣が深いと思ったのである。

案の定、この本は、わずか1日あれば読めるようなフランス語の本であるが、フランス語の初歩の初歩を非常にわかりやすく学べるように工夫されている。世代が近いこともあり、フランス語以外の話題も楽しめた。本の最後には、カミュの『異邦人』とプルーストの『失われた時を求めての』の冒頭のフランス語を読む、というサービスがあり、さらにフランス語を学びたくなるような気にさせてくれる。

今まで(英語以外)、大学院でドイツ語、30の頃、ポーランド語、その次にポルトガル語、スペイン語と来て、フランス語、ポーランド語(2度目)とやってきた。ポルトガルに住んだこともあり、この中ではポルトガル語がもっとも進んだ。ドイツ語、ポーランド語などゲルマン、スラブ系の言語は向かなかった。文法が古めかしいこと、ポーランド語に至っては文法、発音が極度に難しい。やはり、ヨーロッパの言語ではロマンス諸語と分類される言語が日本人には最も向いている気がする。いわゆる、ラテン語起源の言語である。テキストも豊富だから、独学も可能だと思われる。わたしの場合、あとはイタリア語が残されている。(ルーマニア語もロマンス諸語に含まれているが、こちらは活用できる場がないと思われるのであきらめることにする)

1492年、スペインでは、それまで文法といえばラテン語文法であったが、ネブリーハというユダヤ系スペイン人の言語学者が、カステーリャ語文法を体系化した。これは、スペインの植民地政策のなかで、言語という武器として輸出され、植民地の言語教育に大きな力を発揮する。スペインではこうして、カステーリャ語が公用語となってしまったのである。よって、スペイン語文法も明快で学びやすいが、わたしには発音がどうも体質的にあわない。ポルトガル語の響きが向いていた。ブラジル音楽が好きだったこともある。

ロマンス諸語の中でも、フランス語文法も論理的、明快で、日本人にはもっとも学びやすい言語の一つだろう。音も美しいし、ヨーロッパの旅をするときにも、パリは必ず立ち寄るところだろうから、利用価値も高い。それに、ヨーロッパではフランス語を話せると一目おかれる。(英語を話せることは当たり前)教会の壁に刻まれたラテン語が読めれば尊敬される存在にまでなる。日本以上に言語中心の国家であり、文化なのである。



by kurarc | 2020-10-30 06:57 | France(フランス)