ポルトガル建築史家 José manuel fernandes(ジョゼ・マヌエル・フェルナンデス)の業績

ポルトガル建築史を学ぶため、ポルトガルへ行ったのはよかったが、思いがけない事態が待っていた。”ポルトガル建築史”といった表題の書物が大型書店へ行っても見つからないのである。日本であれば、太田博太郎氏の日本建築史に関する書物があるように、ポルトガルにも当然あるのだろうと思っていたが、いくら探してもないのである。あったのは、ルネッサンス期やバロック期のように時代を限定した建築史の書物だけであった。全体を俯瞰するためにはどうしたらよいのか?

途方に暮れていたとき、やっと見つけたポルトガル建築史の書物が、José manuel fernandesの著した『 Arquitectura Portuguesa- Uma Sintese 』という表題のポルトガル建築史の概説書、通史であった。幸運にも英訳も出版されていて、わたしはこの書物により、やっとポルトガル建築史の全体をつかむことができたのである。

José manuel fernandesは最近、どのような仕事をしているのか気になり、インターネットで検索してみた。José manuel fernandesは、1953年生まれ。ドコモモ・イベリコの初代会長である。ネット上で彼の著作がかなり検索できる。近著は以下のような表題であった。

*リスボン 20世紀の教会建築
*カルロス・ラモス ポルトガル20世紀の建築家
*ポルトガル・ブラジル・アフリカ 都市と建築
*アルガルベの民家 etc.

その他、マカオの都市と建築、ポルトガルの映画館、ポルトガルのモダニスタといったテーマの書物も出版されている。

以上のように、扱われているテーマは、本国ポルトガルだけでなく、ポルトガルが植民地とした地域にまで研究が及んでおり、ポルトガル建築という全体を捉えるために、彼の業績を知ることは必須であろう。日本で彼の翻訳書が出版されることが切に望まれる。

*書物の問題もあったが、「ポルトガル建築史」という講義が行われている大学もなかなか見つからなかった。やっとのことで探し当てたのが、ルジーアダ大学で行われていたオラーシオ・ボニファシウ教授の講義であった。教授と面談を交わしたのち、講義を受講することになった。オラーシオ教授は、リスボン大学でもヨーロッパ建築史の講義をしているから聞きに来ていいよ、と言ってくれた。もちろん、授業料なしでである。こうした融通がきくところはありがたかった。

by kurarc | 2020-11-06 08:09 | Portugal(ポルトガル)