芭蕉布 人間国宝・平良敏子と喜如嘉の手仕事


芭蕉布 人間国宝・平良敏子と喜如嘉の手仕事_b0074416_21353073.jpeg



大倉集古館(写真上)で開催されている「芭蕉布 人間国宝・平良敏子と喜如嘉の手仕事」を見学してきた。
(喜如嘉(きじょか)は沖縄の大宜味村の地名)

大倉集古館は初めて訪れた。土曜日、あるいは日曜日、都心を訪問するには最適かもしれない。土日はむしろわたしの地元である吉祥寺のような東京郊外の街は人があふれていて、行く気にはならないが、都心は逆に静かで落ち着いて歩けるからである。

沖縄には首里織、紅型、琉球絣、読谷山花織など様々な染織があるが、その中の一つ芭蕉布を極めた人間国宝、平良敏子さんらの手仕事を展示した展覧会であった。以前、このブログ(2021年10月7日のブログ)で『清ら布(ちゅらぬの)』という本について紹介したが、この本で紹介されてもいた芭蕉布の実物を見学でき、大変勉強になった。染織に関する展覧会ということで、見学者の大半は女性であったが、芭蕉布という沖縄の染織の中では地味な織りではあるが、その色彩の落ち着きと気品、幾何学的模様の緻密さ、繊細さなどどれ一つとっても興味深いものばかりであった。

また、大倉集古館の重厚な空間は、芭蕉布のような気品のある染織を展示するには最適な空間であり、時間を気にすることなく展示物を見学することができた。今回の展示がよかったのは、多種多彩な芭蕉布が数多く展示されていたこと、芭蕉布の模様の意味、色彩をつくる植物の紹介から、その技術までが丁寧に紹介されていたことである。

『清ら布(ちゅらぬの)』の紹介でもふれたが、わたしが沖縄在住時に工房を訪問した藤村玲子さん(故人、紅型の第一人者)の芭蕉布の仕事も一点展示されており、その実物を拝見できたことは幸運であった。藤村さんの仕事を見学できるとは思っていなかったからである。彼女も生きていれば、今頃は人間国宝になっていたかもしれない。

久しぶりに赤坂界隈を歩いたが、東京に住んでいるのだから、休日を利用してこうした展覧会に足を運ぶべきであると痛感した。こうした展覧会がわたしの地元で開催されることはまずあり得ないからである。大倉集古館の向かいは新たにオープンしたオークラ・プレステージタワー(写真下)で、この中間には谷口吉生氏による水鏡がデザインされている。こちらの仕事も見事であった。



芭蕉布 人間国宝・平良敏子と喜如嘉の手仕事_b0074416_21314172.jpeg


by kurarc | 2022-06-18 21:26 | 沖縄-Okinawa