中村好文さんと中谷宇吉郎の住宅

昨日、建築家中村好文さんの講演会を東京ガス横浜ショールームで聴いてきました。話の中心は、現在信州で建設中の中村さんの小屋の話でした。風力発電やソーラーパネル、雨水利用などを駆使した手作り(ローテク)の小屋は、中村さんの実験的な場でもあり、様々な装置をなるべく目に見えるようなかたちにデザインしているとのこと。

いろいろ興味深い話をしていただいたのですが、最も興味をもったのは中谷宇吉郎の住宅の話でした。雪の研究で知られる中谷宇吉郎は自分の住宅を建てることになり、科学者としての素養を十分発揮した住宅を札幌に建設したとのこと。それを中谷は「札幌スタイルの住宅」と名付けたそうです。ちょうど先日、私も札幌へ16年ぶりに行き、北海道大学の木造建築の遺構を観たり、また札幌の時計台として親しまれている旧札幌農学校演舞場の内部を見学し、建築と共に、ローテクな時計の仕組みを見学して驚いていたところだったので、余計身近に感じられました。中谷の先生である寺田寅彦の随筆などを読み返したいと思っていたこともあり、中谷の著作も改めて読み返したいと思うようになりました。寺田や中谷のように、文学や科学がまだ分化していずに、渾然と一体化していたころの科学者の感性をとらえ直すことが必要な時代になってきたのかもしれません。(写真は、札幌市時計台2階の時計の仕組みを説明したモデル。時計は石の重力が動力の役割を果たしている。石は小さいものを集めて木製の桶に入れて使っているが、それは万が一ワイヤーが切れて石が落下したときに、壊れやすくつくることで、建築に与える衝撃を緩和させることが目的だという。)
中村好文さんと中谷宇吉郎の住宅_b0074416_22172340.jpg

by kurarc | 2006-11-22 22:25 | architects