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by S.K.

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名著『東京の自然史』(貝塚爽平著)を読む

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名著と言われる書物がある。その一つの条件は、難しいことをわかりやすい文章に置き換えて説明してくれる書物であるが、さらに、文章に落ち着きのようなものが必要である。あせってせかせかと進むのではない。かといって、だらだらとした文章であってはならない。『東京の自然史』は、そうした名著の条件をすべて兼ね備えた名著の中の名著といってよいかもしれない。

まず、この書物が喜ばしいのは、武蔵野台地について単独で1章設けていることである。わたしが現在暮らす武蔵野台地の成り立ちが太古から理解できる。吉祥寺辺りから武蔵野台地の開析谷(こく)がはじまることが記されているが、そのことを知ってはじめて武蔵野台地の西と東の分岐点あたりにわたしが住んでいることに気づかされたし、井の頭公園というものがなぜあの場所に成立しているのかが理解できた。

古多摩川の流れについても大くの論考がなされている。多摩川は当初、狭山丘陵を分岐点として、埼玉側と現在の東京側の両方に分かれて流れていたことを知る。つまり、武蔵野台地は日本の中でも巨大な扇状地なのだ。

また、富士山の火山灰の分布から、偏西風の平均的風向がわかるということも興味深い。東京湾の成立過程にも驚かされた。かつて、東京湾は陸地であり、その中心に古東京川が流れていたという。(約2万年前)

昨今は地形ブームであるが、その古典とも言える本書は、自然史というかたちをとった「武蔵野論」ともなっているのである。それは、独歩の主観として描かれた『武蔵野』を地理学の立場から保管してくれる書物ともなっている。

東京は決して江戸以降の時空間のみでとらえるものではない。少なくとも10万年から100万年くらいのスケールで考えるものであることを本書は教えてくれた。



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by kurarc | 2017-02-27 22:06 | books

書類、資料の整理方法について

本や書類の「瓦礫」が少しずつ片付けられてきた。事務所の床がやっと見え始めた。

引越しをして片付けに困るのは、本よりもむしろ書類、資料の方である。それぞれ異なるファイルにその時代にたまった書類、資料を挟み込んでいるため、ファイルの厚さや大きさもまちまちであり、自立しないファイルが多いため、本棚に整理しにくい。

新しい事務所に引っ越したこともあるが、根本的に書類、資料関連の整理の仕方を考え直さなければならない時期にきたようだ。わたしははじめに分類した上でファイリングするクセがあるが、それがどうもよくないことがわかった。そうすると、ファイルの量が膨大になってしまい、例えば、たった1枚の資料のためにファイルをつくるなどといった浪費をしていた。

今までの失敗を繰り返さないため、以下のような方法を考えてみたが、うまくいくかどうかは、今後の成果による。

1)ファイルの数を増やさず、かつ、自立できる程度に資料をまとめていくこと。どのように使われるのかわからないような情報は同じ分野の資料に限らず、違う分野のものでも同じファイルに閉じておく。(分類のカテゴリをなるべく細分化しない。)

2)ファイルはかならず「A4」にする。変形のA4も避ける。なるべく簡素なファイルにする。(処分するときに困らないように)

3)時系列に閉じるようなファイルも一つつくる。ファイルの日記帳のようなもの。これは、仕事以外のもの。

4)仕事以外の興味のあるカテゴリーを整理して、最も自分にとって重要なものから整理していく。

5)有効な情報と思われるものしか持たない、ということ。つまり、ファイリングする価値があるかないか、ファイリングする前に見極めること。

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by kurarc | 2017-02-26 12:04 | design

日常の中のデザイン16 ミルクパン

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朝にチャイを飲むこともあり、ミルクパンは必ず必要な調理器具である。ホーローの白いものが一般的かもしれないが、チャイを好きな方はわかると思うが、チャイの成分で白いミルクパンはすぐに茶色にくすんで定着してしまう。ミルクだけを温めるためだけに使うのなら白いミルクパンでよいが、ステンレスのものの方が手入れしやすい。

柳宗理さんの調理器具は以前んから気になっていたこともあり、少し高いと思ったが、柳さんのミルクパン(16cmつや消し)を購入した。いわゆるユニバーサルデザインとなっていて、右利き左利き両者に使用できるようにデザインされている。そのかたちは上から見ると葉のような不思議なかたちであるが、使用してみると確かに水切れ(ミルク切れ)がよい。

取手部分のデザインの昭和な感じが好まれるか好まれないかがこの商品を購入するかしないかを分けてしまうかもしれない。柳さんは現在であれば、この部分はデザインし直すのではないかと思う。機能を求めるユーザーであれば満足できるミルクパンであろう。

*ステンレスのものでも手入れを怠るとすぐに茶色にくすんでしまう。チャイをつくったなら、使用後すぐにミルクパンを洗うことを忘れてはならない。

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by kurarc | 2017-02-25 08:25 | design

映画「天使の入江」とニースの記憶

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ジャック・ドゥミの映画「天使の入江」は、まず冒頭の1分間で釘付けになってしまう映画である。ジョンヌ・モローの顔のアップが現れたかと思うと、その彼女から遠ざかるようにニースの海岸を疾走する車。その車の後ろにはカメラがセットされているのだろう。彼女の姿は一瞬にして消えてしまう。そのシーンには燃えるようなルグランの曲が流れている。

ジャンヌ・モローは苦手な女優であったが、わたしはこの映画の演技を観て彼女の演技力にすっかり魅了されてしまった。モローはわたしの印象では重い女の役が多かったと思うが、ここではコメディエンヌさながらの軽いギャンブル好きの女を演じている。その演技が今までわたしが抱いていた彼女のイメージを覆してくれるのに十分であった。

この映画を観る前、実はあまり期待はしていなかったのだが、その期待はずれの期待を見事に裏切ってくれた。この頃のジャック・ドゥミの映画はすべてすばらしいものばかりである。

ニースはかつて一度訪れたことがある。しかし、地中海の海水がやけに澄んでいたこと、湖のような海岸だった記憶があるだけで、あまり覚えていない。わたしはニースからサン・ポール・ド・ヴェンスの街に建つ建築家ホセ・ルイス・セルト設計の美術館に行くためだけに立ち寄った。日記によれば、ニースから歩いて2時間以上かかったとある。こうした何気ない想い出というものがわたしには最も貴重な記憶なのである。



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by kurarc | 2017-02-24 22:10 | cinema

「かわいい」とは

「かわいい」という言葉は、いまや国際語になりつつある。しかし、「かわいい」とはそもそもどのような意味なのか?

わたしは、典型的な「かわいい」という言葉をあまりよい言葉とは思っていない。単に姿、外見が「かわいい」とか、そのような意味で「かわいい」という言葉は使いたくない。

「かわいい」ということを最近特に感じたのは、Li-sa-Xという12才の少女のギタリストの演奏をyou-tubeでみたときである。彼女がギターを弾く様に「かわいさ」を感じた。それは、「健気」にギターを弾いていること、その様に感じたのである。

「かわいい」をわたしは「健気さ」という意味として解釈したい。何かに一生懸命に取り組むこと、それが「かわいい」ことと思いたい。だから、「かわいい」人はいくら歳をとっても関係がない、「かわいい」人でいられるのである。

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by kurarc | 2017-02-22 21:00

毎日新聞 日曜版

3.11以降、新聞をはじめとしたメディアに頼ることは危険だと思い、ずっと新聞から遠ざかっていた。しかし、池澤夏樹さんの『知の仕事術』を読み、新聞も距離をおきながら付合うのもよいか、と感じ、たまにコンビニで買うことにした。特に、池澤さんをはじめとした書評が掲載される毎日新聞の日曜版からにしようと。

新聞を自宅で手にするのは久しぶりのことであり、かなり新鮮に感じられた。「日曜くらぶ」と題された別刷りの一面には、前田敦子さんが登場していて、以前から知ってはいたが映画好きのことについて書かれていた。映画好きというだけでも親近感がわく。顔写真をみると以前より随分と大人びたように思った。

注目の書評欄「今週の本棚」には、堀江敏幸氏による『タブッキをめぐる九つの断章』(和田忠彦著、共和国)が紹介されていた。イタリア人のタブッキは、ポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアの研究者として著名であり、自らポルトガル語で小説を書くこともある作家である。日本人にはファンも多い。長年、翻訳を担当してきた和田氏のタブッキ論集大成といったところだろうか?興味をそそられる。その他、須賀しのぶさんのポーランドを主題とした小説『また、桜の国で』に目が留まる。

週に一度くらい新聞を読むということはよいかもしれない。タイムリーなニュースなどはラジオで聞けばよいのだし、週一度、その週の出来事を分析、精査した文章を読むくらいがよい気がする。いわゆるウィークリーになる訳だが、そうしたペースで刊行される良質な新聞(できれば、タブロイド判)ができるとよいのに。

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by kurarc | 2017-02-19 17:42 | books

ポルトガル、そして柄本祐さん

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仕事から帰り、テレビをつけると、俳優の柄本祐さんがポルトガルを訪ねる番組があらわれた。テレビ番組を見てチャンネルを選択した訳ではない。こうした偶然にも驚かされるが、柄本さんのポルトガルへの情熱、特に心酔するというオリベイラ監督への思いにも驚かされた。

リスボン、ポルト、ギマランエス(ギマランイシュ)が映し出された。ポルトのドウロ河沿いはわたしが滞在していた頃とかなり変化したように思った。ポルトを古都と紹介していたが、わたしが古都と感じるのはギマランエスの方である。特に、この街の夜はよい。わたしはこの街で夜入ったレストランが未だに忘れられない。路地に面し、外の明かりがレストラン内にやさしく届く光景が。レストランで食事をすることの意味はこうした場所で食べることなのだ、と感じさせてくれた。ここだけではない。ポルトガルのレストランはこのギマランエスに限らず、食べることと場所との関係を大切にしている。

柄本さんは、映画「階段通りの人々」の舞台となった階段、バルのあたりを訪ねていた。わたしもこの映画の印象が強く、リスボン滞在中に訪ねたことがある。といっても、わたしもリスボンを歩いていて偶然に見つけた。リスボンの中心バイシャ地区の東寄りに位置するサン・ジョルジョ城へ向かう階段である。リスボンに数多くある階段(あるいは坂道)は、どれも舞台となるような芸術である。それも、誰もがいつでもそこを通ることができる。都市の中で開かれた芸術のようなものといっていい。

柄本さんのような若者がポルトガルが好きだと言うのにはやはり驚かされる。この国、都市の良さはあまり多くの人には伝わらないと思えるからである。手短に言えば、都市であることは、およそ人を無名にしてしまうものだが、ポルトガルの都市は都市でありながら、自分が誰であるのかを失わない、そこがポルトガルの都市の良さということである。

普通はパリやバルセロナ、ローマがよいという人が大半であろう。柄本さんのようなポルトガル好きはそんなに多くなくてよい。ポルトガル人も誰もパリのような街になることを望んでもいない。ポルトガル好きを大声で叫ぶ必要もない。ポルトガル好きは静かに好きであればよいのである。



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by kurarc | 2017-02-18 09:16 | Portugal

池澤夏樹著 『知の仕事術』を読む

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池澤夏樹さんが自らの仕事術の一端を新書で出版した。わたしが全幅の信頼を寄せる池澤さんの仕事術には並々ならぬ関心があり、一気に1時間で通読する。(新書は2時間以内に読むものである。)

仕事術もさることながら、刺激的なエピソードも豊富に含まれていて、大変参考になった。それに、非常に読みやすかったのには助かった。池澤さんが天童木工の椅子を使っていることや、手作りの本棚、テーブルをつくるなど思いがけない話題もあり、興味深かった。自分のやり方で仕事術を精査していったということのようだ。

本好きということが改めてよくわかったが、かといって、コレクターではない、ということが以外であった。とはいっても、一万、二万冊くらいの蔵書はあるのだろうが、読まなくなったものは古本屋に処分してしまうことをいとわないという。わたしがよく活用する古本屋の名前も出てきたりして驚いた。毎日新聞の日曜版今週の書評は必ず目を通そうと思ったこと、MacBook Air、Kindleはそろえてもよいと思ったこと・・・etc. 

池澤さんの仕事術のごく一部が公開されたという感じは否めない。核心の部分は公開していないのではないか。しかし、今後、興味の範囲を広げる必要性と、池澤さんのいう、情報、知識、思想というレベルを常に意識し、更新していくことが重要、ということか。

*一年前の今日、国会をにぎわした「保育園落ちた日本死ね!!!」の全文が引用されていた。この文章、池澤さんも言うように「名文」である。だれか、この文章に曲をつけて歌ったらどうだろうか?

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by kurarc | 2017-02-15 21:52 | books

” Canson d'Andy ” をトランペットで練習

映画「ロシュフォールの恋人たち」の中の音楽、” Chanson d'Andy ”(シャンソン・ダンディ) をトランペットで練習してみた。久しぶりのトランペットの練習である。

映画では、Andy(ジーン・ケリー)が一目惚れしたソランジュを待ちながらピアノを弾いているシーンの中で使われる。ソランジュの作曲した曲という設定になっている。

曲としては、多くの倍音の上下音を含んでいて、リップスラーの練習に適している。これを、タンギングとリップスラーの両方で練習してみた。こうしたルグランの名曲をトランペットの練習に活用することは、練習することのモチベーションを高めてくれる。

トランペットの教則本は、アーバンなど19世紀の教本がいまだに主流となっている。同時代の音楽を教則本に変換してくれるような奏者はいないのだろうか。宇多田ヒカルでもperfumeでもなんでもよい。わたしは、映画音楽によるトランペット音楽の教則本ができることを望むが、活きた音楽を練習できでばもっと練習が楽しくなるに違いない。

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by kurarc | 2017-02-12 19:11 | trumpet

野菜スープを主食に

事務所の引越しで忙しく、なかなかスープを仕込む時間がなかった。今晩、やっといつものスープを仕込む。およそバケツ一杯の野菜を一気に煮込む。これで一週間分である。

すでに、野菜スープ(大豆など豆を含んだもの)を食前に飲むことが習慣になってしまったので、飲めない間は食事が落ち着かない。何か不足した感覚がつきまとうのである。特に、外食では野菜スープを食前に飲むことは無理だから、せめて、前菜として野菜サラダを口にする。

3年ほど前にこのブログで取り上げた糖質制限食はかなり市民権を得てきたように思う。牛丼屋のような場所でも、ご飯の替わりに湯豆腐を提供する店も出てきた。それとは正反対のカフェがスターバックスである。甘い菓子、甘いコーヒーが大人気である。ここは、マクドナルドがカフェ化したのと変わらない。

労働がデスクワーク化してきたこともあり、定食は日本人の健康を蝕むメニューとなった。定食は肉体労働食なのである。労働時間中にほぼデスクから離れないようなホワイトカラーの主食には、野菜スープが適していると思っている。もちろん、肉体労働をするブルーカラーにも、野菜スープは適している。血糖値の変動を抑えてくれるからである。

日本人から白米をぬぐい去ることはできないだろうが、もうすぐ誰もが気づくことになるだろう。日本人の食生活を根本的に変革しなければならないことが。

*日本人のアイデンティティを支えているような日本食が、実は現代の日本人にとって大したメリットがないこと。これは大きな社会問題である。糖質制限食と命名したのは、むしろ、そうした問題を直接的に指摘することを避けた巧妙な戦略だったのである。



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by kurarc | 2017-02-11 20:01 | gastronomy


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