iPod touchとiTunes

半年前に買ってほったらかしにしていたiPod touchを今年から使い始めた。まずは、無料で楽しめるものを中心にダウンロードする。ルーブル美術館の作品案内や建築ポケットガイド、あるいはオセロゲームからメトロノーム、夏目漱石の『夢十夜』を朗読したもの等々。また有料だがi文庫もダウンロードする。

i文庫では151冊の文学作品がダウンロードとともに付いてきて、iPod touchを使いながら読書ができる。家には筑摩書房の文学全集があるが、納戸でホコリを被っていた。しかし、異なるインターフェースにより日本文学が再構成されると何か全く新しい文学のように思えるのはなぜだろう。iPodという小さい画面の中でページがめくられていく感覚は、かなり新鮮で、1ページあたりの文字数が物理的に制限されるせいか、文章もリズミカルに読めるような気がする。青空文庫を利用すれば、もはや文学全集はひとまず図書館にあれば問題なくなる。また、iTunes Uでは言語は英語だが、魅力的な講義の数々を聴講することができる。試しに、コロンビア大学で行われたジャズトランペッターのルイ・アームストロングに関する講義を聴講してみる。トランペッターのウィントン・マルサリスが講師として出演しているものだった。英語は多少わからなくても、十分楽しめるもので、これらはすべて無料である。

問題はiTunesのソフトである。膨大な情報を処理するソフトでなければならないが、まだかなり不完全で使いづらい。いずれ改善されることを期待したい。無料の情報を享受していて気になるのは、その情報の送り手である。情報は双方向性がなければ、批評もできないし、情報も更新できない。我々は単に情報の受け手だけに甘んじては、頭がパンクしてしまうだろう。(コメントできるようになっているのがせめてもの救いである)こうした情報を利用するかしないかで個人間の情報格差が拡大することは目に見えているが、この膨大な情報とのうまい付き合い方を教えてくれる新たなライブラリー、すなわち、現在の図書館を進化させ、インターネット状の情報についてもフォローしてくれる公立の情報図書館のような施設ができてくれるとありがたい。

*情報図書館の司書は、様々な言語に精通している人材がよいだろう。情報図書館は、外語大を卒業した多くの学生たちが働く場としても期待できる。そうすれば、子供達も日常的に様々な言語に接する機会が増えて、語学教育の場にもなるだろう。

by kurarc | 2010-02-02 21:34 | books