グランドツアー/08 グラスゴーからロンドンへ 1984/07/04-07/09

初めてのイギリスの旅もいよいよ終盤に差し掛かっていた。グラスゴーからロンドンへ帰る途中、リバプールやオクスフォードに立ち寄ったが、このあたりの記憶は曖昧で、メモにもほとんど記述がない。この間、当時の新しい建築物をいくつか訪ねているが、その中でも重要なものが、建築家ノーマン・フォスターのルノー社部品配送センター(下写真、上から2枚目まで)、建築家ジェームズ・スターリングのレスター大学工学部棟(内部写真、下)である。

この二つの建築物は、デザインの質はかなり差はあるが、大胆な屋根の構造に共通した特徴がみられる。フォスターのデザインは、大地に鉄骨のテントを広げたような建築で、そのデザインの密度には圧倒された。

建築家磯崎新さんの著作で有名となったスターリングのデザインは、直方体上のガラスの箱を45度傾け連結し、屋根とした大胆なもので、鉱物的なデザインはフォスターのデザインとは異なるが、両者ともに既製の屋根や開口部、壁といった概念を払拭し、「皮膜」の概念に近づいた建築をつくっていたのは新鮮であった。旅行メモにも「ガラスの皮膜」という言葉が記されていて、この約3ヶ月後訪ねることになる建築家フライ・オットーのミュンヘン・オリンピック競技場とのつながりを類推させた。(スターリング氏には、この約3ヶ月後、シュトゥッツガルト美術館を訪ねたときに偶然、お会いすることになる。)

初めてのヨーロッパとしてイギリスの旅は感動の連続であったが、この当時、理解しがたい面も数多く目にした。その一つが、休日の広場のゴミである。休日の夕方、イギリスのスクウェアーに行くと、きれいな芝生の上はゴミの山となっていた。美しい田園風景とこのゴミの山の汚さ、地下鉄駅の汚さなどは理解できないものであった。25年以上前の話だが、現在はどうなっているのだろうか?
(11年前にロンドンに滞在したときは、それほどゴミは気にならなかったように思う。)

この後、ロンドンからドーバー海峡を鉄道を乗せた船で渡り、いよいよパリに向かうことになる。プラス面、マイナス面などいろいろ換算しても、初めてヨーロッパの空気を味あわせてくれたロンドンという都市は一生忘れられないだろう。
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by kurarc | 2010-09-01 22:31 | archives1984-1985