『古代の朱』 復習として

このカテゴリcolorsでは、当分の間、「アカ(朱、赤、紅etc.)」の色の探求に費やすものとする。

以前、このカテゴリで『古代の朱』(松田壽男著)という著書について述べた。まずは復習も兼ねて、3つの「アカ」について前掲書をもとに簡単に記しておく。

1)水銀系のアカ:硫化水銀(HgS)のアカ。古代では「まそほ(真赭)」と呼ばれる。純粋のアカ。

2)酸化第2鉄のアカ:酸化第2鉄(Fe3O3)のアカ。俗にいうベンガラ。黒ずんだ紫に近いアカ。「そほ(赭)」と呼ばれる。

3)鉛系のアカ:4酸化鉛(Pb3O4)のアカ。一般に鉛丹または黄丹と言われる。ミカン色に近いアカ。

神社にみられる朱塗りの部分は、もともとは朱(水銀系のアカ)を使用していたが、後代には朱の代用品として鉛丹が用いられるようになる。つまり、鉛丹のアカはミカン色に近く、黄色みの強いアカであり、この色が普及したために、松田氏によれば、「朱」という純粋のアカに対する日本人の感覚が変わってしまったことが推測されるという。逆に「朱」というと、黄色みがかったアカを思い浮かべるようになったこと、これは間違いと言える。

松田氏は、こうした経緯から、「古代の朱」(水銀、朱砂の文化史)について調べるようになる。(普遍化して言うと、日本における金属、鉱物の文化史ということになろうか。)

*まそほ(真赭)がどのような色なのかは注意を要する。松田氏の書物に具体的な色見本が掲載されていないため、私もまだ確実に指摘できない。ウィキペディアに掲載されている「まそほ」の色は、松田氏の書物が言及する色とかけ離れているように思える。この色が古代における「まそほ」の色である、と言えるような資料をもう少し調べてからブログで言及することにしたい。それにしても、「アカ」といった時に思い浮かべる色のイメージは、誰一人同じではないだろうから、色彩について書くということは難しい。

by kurarc | 2011-02-08 16:42 | colors