映画『汚れた心』 ブラジル日系社会の暗部

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渋谷のユーロスペースで上映されている映画『汚れた心』は、ブラジルに興味のあるものは観ておいた方がよい映画だろう。映画の質自体は首を傾げてしまうが、第2次大戦後におこったブラジル日系社会の血なまぐさい事件については、日本において、あまり知られていないからである。

簡単に言ってしまうと、第2次大戦後、ブラジル日系社会に日本の敗戦という情報が伝わりにくかったこともあり、(本当は伝わっていた)日系人同士で敗戦を認めるものと認められず大日本帝国の神話をひきずったもの同士で殺し合いがおこったのである。それは、負け組、勝ち組という言い方がされ、お互いの主張が交錯してしまった。

負け組の方は事実を認め、冷静であったが、勝ち組の方は神話に翻弄されてしまった。真実を口にするものが、犠牲になってしまうという悲劇がおこった。(それは、時代が変わった今も大して変わっていないが)映画ではその悲劇によって夫婦も分断されてしまう様が描かれている。

映画『汚れた心』はこの事実を殺し合いの映画としてかなり矮小化してしまったことは残念だったが、日本の俳優たちの熱演は光っていた。(しかし、常磐貴子がなぜ台詞のない役であったのかは不明)日本人がブラジルに正式に移民をはじめて2018年は確か110周年を迎えるはずである。オリンピック、ワールドカップとこの日系社会の歴史など、 2010年代はブラジルが注目される10年になることは間違いない。

歴史の恐ろしさを教えてくれる映画である。それは、今の日本人が最もよく理解できるテーマではないか。

by kurarc | 2012-08-06 23:24 | Brazil