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ラフマニノフ 『ヴォカリーズ』

ヨウコ・ハルヤンネのトランペット演奏で初めて聴いた曲である。様々な歌手に捧げられた14歌曲集の中の最後の曲がこのヴォカリーズで、一度聴くと忘れられない曲。月並みな言い方をすれば、「哀愁」という言葉がよく似合う曲である。

この曲を完成させた頃、ちょうどスクリャービンが逝去している。これは私の勝手な想像だが、彼の死後数ヶ月たってから決定稿を刊行していることを知ると、彼の死となんらかの関係があった曲ではないか?

トランペットでクラシック曲を吹くことを考えた時、真っ先に思い浮かんだのがこの曲である。オリジナルはソプラノ歌手を想定しているために、かなり高音が要求されるが、少し調を変えて私でも音の届く範囲で挑戦したい曲である。


*下に「HPラフマニノフ資料館」からのこの曲に対する解説を添付しておく。

第14曲 ヴォカリーズ嬰ハ短調(ソプラノまたはテノール)
時期:初稿   1915年4月1日
    決定稿 1915年9月21日、モスクワ
歌詞:なし
献呈:A.V.ネジダーノヴァ
初演:1916年1月24日、モスクワ:クーセヴィツキー・コンサート、ネジダーノヴァ(Sp)&ラフマニノフ(Pf)

メモ:
ラフマニノフは友人のチェリスト、アルツシューラーに宛てた1918年1月12日付けの手紙で、アルツシューラーの「ヴォカリーズをバッハのアリアのように(スタイルで)演奏する」というアイデアに強く同意し、「主旋律は何人かのヴァイオリン奏者がユニゾンで弾く必要がある。以前に10人のヴァイオリン奏者でヴォカリーズが演奏されるのを聴いたことがあるが、すばらしい響きで、大変満足した」という旨のことを述べている。「バッハのアリアのスタイル」と「主旋律を複数の奏者のユニゾンで演奏する」ことがどうつながるのかわからないが、そう言われてみればヴォカリーズにはバッハ(やバロック時代の作曲家)の宗教曲のアリアを思わせるところがあり、非常に興味深い。

【作曲時期について】
 作曲時期については多くの文献で混乱が見られるが、決定稿の自筆譜には上記の日付があること、同年4月1日の日付のある異稿もあること、ラフマニノフが音楽学者アサフィエフに依頼されて作成した自作の作品表では、この曲の作曲は「1915年4月」となっていること、という3点から判断すれば、4月に書き上げた初稿を改訂し、9月に決定稿が完成したものと考えられる。作曲開始の時期は1912年とも言われるが、厳密にはわかっていない。いずれにしても、他の13曲の出版(1913年)とはかなり間を置いて完成されている(出版は1916年)。

【初稿について】
 この曲の初稿の自筆譜は被献呈者のネジダーノヴァの遺族が所有していたが、1997年にグリンカ博物館が購入し、閲覧が可能となった。2003年にはこの自筆譜による録音も行われている(録音の項目参照)。
 初稿は変ホ短調で書かれ、現行の決定稿とは旋律線や伴奏が異なる部分が多い。初稿の方が若干饒舌・官能的な印象があり、決定稿はより簡潔で禁欲的になっている。初稿から決定稿への改訂はネジダーノヴァの意見を取り入れたものと思われ、特に調性はネジダーノヴァの声域に合わせて下げたのはほぼ間違いない。
 館長が聴き比べた印象では、伴奏は初稿は荒削りで決定稿に分があるが、旋律線は初稿の生々しさが捨てがたい。
by kurarc | 2013-09-09 21:05 | trumpet