台のようなイス

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先日見学会で訪れた「代田の町屋」という坂本一生氏設計による住宅の玄関ホールに、大橋晃朗先生の「台のようなイス」(上写真)と名付けられた椅子が二脚並んでいた。

家具に詳しい人間でない限り、この椅子が大橋先生のデザインであることはわからなかったに違いない。大学でお世話になった大橋先生のこの椅子は、大橋先生が家具のデザインに本格的に取り組み始める記念すべき椅子であった、ということは記しておかなければならない。

大橋先生が亡くなられてから出版された『トリンキュロ 思考としての家具』という書籍の中に、この「台のようなイス」に関するメモが掲載されている。私はこの椅子が25ミリの角材と22ミリ、24ミリの丸材の合計3種類の材(カバ桜材)で構成されていることに興味があった。

メインは25ミリの角材であるが、これは私の勝手な推論だが、リートフェルトの「レッド・アンド・ブルー チェア」(下写真)が25ミリの角材で構成されていることに最近気がついた。大橋先生が25ミリにこだわったのは、このリートフェルトの椅子からの引用であったのではないか?

デザインにおいて、何かを決定するときに、自分だけの感覚に頼るのではなく、歴史を参照することはよくあることである。近代を象徴するリートフェルトの椅子に大橋先生がそのインスピレーションを求めたことは十分考えられる。

これら二つの椅子は全く異なるデザインだが、直方体(あるいは円柱)という等価で均質な断面形状を選択したことはリートフェルトの影響であろう。

「台のようなイス」は注意して眺めると、様々な家具の脈絡が連想できる。その一つ、家具の脚を4つ脚としてデザインしていないことは重要である。
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by kurarc | 2013-10-16 18:33 | design