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昭和の窓

成瀬巳喜男の映画『稲妻』の中で、高峰秀子(清子役)が窓辺に座って、外の風景を眺めるシーンが登場する。窓は椅子のように腰掛けられる高さからはじまるため腰掛けられるのだが、このような「昭和の窓」は、窓が低い位置から始まるため開放的であった。窓の外には金物の手すりがついていて、そこに鉢植えを置くこともできた。普通は窓と手すりの間に雨戸がしまる構造になっていた。

現在住宅はアルミサッシが普及したことや、窓を腰掛けられる高さに設定すると、子供が落下する可能性があること、治安の問題もあり、掃き出し窓以外は床から90センチあたりまで腰壁をつくり、その上を窓にすることが多い。

私の実家も2階の表通りに面している窓は、「昭和の窓」がしつらえてあった。その部屋は下宿となっていたので、子供の頃、私が遊びに行くと、下宿先のおじさんは、私が窓から落下しないように、浴衣の紐を私の身体に結わえていた。

眺められる風景が外に広がっていれば、このような窓を是非デザインしていきたいのだが、都市部では窓を開けると隣の家の壁だったりして、うまくいかないことが多い。今どきのデザイナー、建築家たちの窓をみていると、窓が開いているだけ、そこに花の一つも飾ることができないものが多い。都市はそのような窓(カーテンウォールもその一つ)が連続して、生活の表現としての窓がほとんど見あたらなくなった。「窓辺」という言葉を使いたくなるような窓をデザインしなければと思うこのごろである。
by kurarc | 2013-11-02 16:09 | design