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椅子の構造力学

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椅子のデザインは、その表層上のデザイン、テクスチャーも重要だが、人間の体重を支えるという構造力学も重要となる。

人間の体重は様々だが、100kgくらいの体重を想定しておくことは最低必要だと思われる。家具メーカーはどの程度想定しているのか知らないが、力士のような150kgくらいの体重の人間は普通の椅子の大きさでは納まらないから、特注対応になると思われる。

木製の椅子で肝心なのは、その力学の方向性だろう。椅子は前後、左右にかかる応力を負担しなければならないが、通常は前後の力を左右より過大に考える必要がある。椅子に座るときに、人間はかなりの加速度をもって座につくし、背に体重をかけるため、曲げモーメントに対する力も配慮しなければならないから、そうした前後方向の応力には特に気をつけなければならない。椅子に座りながら子供でない限り、左右に身体を揺らすような人はいないから、左右方向には前後方向ほどの応力は想定しなくてよいことになる。

著名なデザイナーの椅子をみると、その点に対する配慮がなされている場合が多い。たとえば、最近このブログで紹介したY-Chair(上写真)では、前後方向では長方形(上下にアール加工あり。前に行くにしたがい絞り込んでいる。)の断面形状の貫が配置され、左右方向では25Φ程度の丸材を15Φ程度に絞った貫が使われ、その力関係が明確に表現されている。

こうした通常配慮すべき構造力学を踏襲すれば、椅子のデザインはあらかじめ決まりきってしまい、新しさは生まれない。そこでデザイナーたちは、こうした常識を全く新しい解決方法で解くことになる。しかし、それもやりすぎるとクセが強いデザインとなったり、製作上苦慮し、コストが跳ね上がる可能性があるので、落としどころをどのあたりで見極めるかはデザイナーのセンスに関わってくる。
by kurarc | 2013-11-03 13:59 | design