スペイン内戦と映画『エル・スール』

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武蔵野市立中央図書館で借りた『ビクトルエリセ』(紀伊国屋映画叢書2)の中に、映画『エル・スール』論がいくつか収められていた。映画『エル・スール』は、スペイン内戦を背景にした映画であり、その知識なしにみることはできるが、映画の奥行きまで感じとることはスペイン内戦の知識なしには難しい。

叢書の中で、若松隆氏による小論『スペイン内戦から見た『ミツバチのささやき』と『エル・スール』は、スペイン内戦理解にかなりのページを割いて、映画『エル・スール』の背景を分析している。私が思っていたこととほぼ同じような分析が書かれていたので、私の身勝手な予測が確かめられたようでほっとした。スペイン内戦を少しでも知っていれば、私の予測は誰もがもつものではあるが、映画の中での父アウグスティンは共和主義者側の人間であり、反乱軍側(フランコ側)からかなりの迫害を受け、辛酸をなめた医者として描かれているということ。彼がカトリック教会へなかなか行かないのも、当時教会が反乱軍側を支持したことによるものである(これは私の予測)ことetc.が、若松氏の文章からよく理解できた。

その他、若松氏の指摘の内で興味深かったのは、スペインの哲学者ウナムーノの逸話と、アウグスティンの娘エストレリャのこと。ウナムーノは晩年、共和主義側と反乱軍側でゆれ動き、最期サラマンカ大学で行った反乱軍側の演説を批判したことにより、軟禁され、悶死したということ。また、この映画では息子ではなく、なぜ娘だったのかについて、若松氏は、1931年に成立するスペイン第二共和制のイメージに、「美しい少女」(La Niña Bonita)が与えられていたからではないか?と言及している。つまり、少女エストレリャの姿を借りて、スペインの再生を期していたのではないか、という結論である。
by kurarc | 2014-01-08 15:10 | cinema