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ホテル(宿)

旅をしたときの情景がふと頭をよぎることがある。そのときに常に思い出すのは旅でお世話になったホテル(宿)である。一時的な宿とはいえ、わずかな間、ホテルは大切な家となり、休息するための場所となる。ホテルと言われるようなところに宿泊したことはあまりないが、きれいなところ、汚いところ、それぞれ想い出が甦る。

イラン(テヘラン)で宿泊した宿は窓のない宿。ベッドが置かれるだけでほとんど埋まってしまうような2畳間程の宿であった。冬であったため、部屋には石油ストーブが一つ置かれていた。深夜、爆撃音で眠れない。そんなときドアをノックする音がして、扉を開けると、薄暗い廊下にイラン人らしい男達が3人くらい立っている。なんやら、ストーブを一時貸してくれ、といっているようであったので、貸す。翌日ストーブをつけようとすると、火がつかない。石油がすべてぬかれていたのである。

こうした思いがけない出来事も今となってはよい想い出である。こうした宿はさすがに再び訪れたいとは思わないが、普通は再度訪ねてみたいという郷愁を感じる。1日でも家であったということがこれほどの郷愁を感じるとは不思議である。

1984年にポルトガルのエヴォラで宿泊した宿が忘れられず、1995年に再びポルトガルを訪れたときに立ち寄ってみた。もとユダヤ教徒たちの居住地区にあったその宿は、今から思うとユダヤ教徒の家族であったかもしれない。ホームスティのような宿は、私に一部屋を与えてくれる。普通であればよそ者が宿泊するのだから、気になり部屋に覗きにくることなどありそうに思うが、全くそうしたことはなく、私は家族の一人のように振る舞われた。旅人を宿泊させることにもその国特有の文化が存在することを知った。

この宿の経験がなければ、1997年に再びポルトガルに行くことはなかっただろう。短い時間でも「住む」ということは人に特別な感情を与えてくれるもののようだ。
by kurarc | 2014-01-24 23:49 | saudade-memoria