「密息」という呼吸方法

トランペットのような金管楽器、あるいは木管楽器をマスターするための基本となるのが「呼吸」である。トランペットの教則本には、かならず呼吸に関する章があり、腹式呼吸をマスターするように書かれているものが多い。しかし、今やそれだけでは足りない。呼吸についてはインターネットを調べれば様々な呼吸方法があり、そのどれがトランペットをやる上で重要なのかまで言及しなければ、私のような素人の奏者でさえ説得できないのである。

たとえば、呼吸の方法の一つに「密息」という方法がある。尺八奏者である中村明一氏の書物で知った呼吸方法で、簡単に言うと吸う時も吐く時もおなかをふくらませた状態を維持する。尺八は大量の息を必要とする楽器であることから、虚無僧の間ではこの呼吸法が代々伝授されてきたようだ。

中村氏の本の中で、彼が師事した九州博多の虚無僧からこの呼吸方法を伝授されたときのエピソードが興味深い。中村が吹いた尺八に対して、

「君はいい音を出そうとして、音を押さえつけようとしている。そうではなく、虚空のように吹け」

と教えられたという。窓から広がる青い空のかなたにある宇宙を感じて吹け、ということらしい。

つまり、呼吸とはそうした宇宙との交感(コレスポンダンス)とも連関するような壮大な身体の運動なのだということ。「虚空のように吹け」とは、なんと哲学的(禅的)な表現であろうか。こうした禅問答のような言葉も今の自分には何かリアルに感じられる。トランペットも虚空を感じて吹くことを意識してみようと思うのである。
by kurarc | 2014-01-26 20:26 | nature