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寺田寅彦著  『天災と国防』

『ちくま日本文学034 寺田寅彦』に『天災と国防』という随筆が収められている。寺田は晩年、東大の地震研究所に勤めることになったから、地震などの天災に敏感になっていたと思われる。この随筆は寺田が亡くなるおよそ1年前の1934年に書かれた。

この随筆を読むと、寺田の文章の内容は、現在度重なる災害を予見しているかのようだ。ちょうどこの随筆が書かれた頃、多くの天災に日本が見舞われたこともあったようだが、「非常時」に対する備えを痛烈に訴えている。

我々のような建築に携わるものに耳が痛いのは、この頃新しく建設された小学校の被害が大きかったことが取り上げられていること、また、古い集落に被害が少なく、新開地に開発された家屋の被害が多大であったことが、寺田の調査から明らかになったことが述べられている。

寺田は戦争がやってくることを既に感じ取っていたらしく、「大和魂」を戦争にむけるのではなく、天災への科学的対策に向けるべきことを訴えて文を終えている。

優れた業績を残した先人の文章の中には、予見的な内容が数多く見受けられ、驚かされる。こうした声にもう少し早く気づき、耳を傾けるべきである。
by kurarc | 2014-02-02 14:55 | books