玄関廻りの工夫

今日は久しぶりに激しい雨が降った。こうした日には外に出かけて玄関に入ったときに、濡れた衣服や傘をどこにおくのか迷うことが多いのではないだろうか。

こうした具体的な問題について、特に住宅を設計するときには注意する。もちろんプランにある程度余裕をもてなければなかなか実現はできないが、具体的な生活を想定して、あれこれとプランを練るのである。

三鷹で実現したMA-Houseという住宅では、玄関と玄関ホールのレベル差は0であり、タイル敷きとなっている。雨の日には、玄関ホールに濡れた衣服を持ち込んでも、他の室内にそうした湿気を持ち込むことがないように6畳間ほどのスペースがあり、そこで湿気に対処できるようになっている。

鎌倉のIS-Houseでは、玄関から水廻りにかけて、土間となっており、濡れたまま浴室や洗面所まで土足で入れるようになっている。濡れたコートなどはそのスペースに置いておけば問題はない。もともと、サーフィンをやった後に、そのまま浴室に行けるような導線を考えてのプランであるから、雨の日にも対処できるのである。

IS-Houseのこうした導線は、実は鎌倉の古い民家でよく見受けられる。浴室ににじり口のような戸がついていて、海水浴をした後、浴室に外から入れるように工夫されているのである。つまり、私が導線を考えたということでなく、そうした地域の生活から導きだされた知恵を参照しているということである。

また、東京、門前仲町のFM-Houseでは、玄関に風除室を設けている。玄関ホールに引き戸を設けて、ホールを閉じた空間にできるよう配慮した。これは北海道など寒冷地によく用いられる作法であるが、FM-Houseでは、リビング(2F)と玄関ホール(1F)が連続したプランであったことから、一度、玄関を完結した部屋のようにして、外気を遮断したのである。こうすることで、夏の冷房、冬の暖房の効率もよくなる。

住宅は、こうした具体的な身ぶり、振る舞いを考えながらつくることは、一つの設計方法であるが、あまり細かいことまで考慮しようとすると、かえって窮屈な住宅になってしまう。我々建築家は、そうした様々な要求に対し、常にバランスを考えながら、最適な解を導きだしていくことが求められる。

by kurarc | 2014-03-13 19:44 | archi-works