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鴨長明『方丈記』

古典が時間を飛び越えて我々に迫ってくることがある。最近ではこの『方丈記』がそうであろう。3.11という破局的災害によって、『方丈記』は逆照射され、息を吹き返したかのようだ。

建築を専攻するものは、この文学を建築論として読んでしまう悪いクセがある。方丈の庵を数寄屋のいわば原点のような空間として感じ、どのように生活し、どのような事物がそこに持ち込まれたのかに興味を集中してしまうのである。

しかし、もう一度『方丈記』の原点、つまり災害文学であったことに立ち返らなければならない。火災、竜巻(辻風)、飢餓、地震をリアルに記述した文学として、再認識することが必要(特に建築畑の人間は)なのである。

また、堀田善衛氏の著書『方丈記私記』のように、当時の藤原兼実や定家といった官僚、公卿の言葉と比較をすることによって、作者である鴨長明のラディカルな言説が浮かび上がってもくる。そのように読んで行くと、鴨長明は我々と同時代人であることが理解できる。古典とは、ある瞬間に時を超えて配達される手紙なのである。
by kurarc | 2014-05-23 22:48 | books