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『終わりなき闇 チェット・ベイカーのすべて』

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図書館から、『終わりなき闇 チェット・ベイカーのすべて』(ジェイムズ・ギャビン著)を借りてくる。しかし、プロローグを読んだ段階で、借りてきたことを後悔している。訳者の鈴木玲子さんも訳者あとがきで述べているように、翻訳を進めるにしたがって、彼のことを嫌いになっていったという。

彼の美しいハーモニーを奏でるジャズ・トランペットとは裏腹に、彼の私生活はとんでもないものだったことが、プロローグを読んだだけで理解できた。通常、プロローグは、読者を著書に導くためにあらゆる話術を使い、この本がいかにおもしろい内容かについて期待を膨らませる目的で書かれるが、本書はむしろその逆。読むには相当の覚悟が必要だよ、とアドバイスしてくれているような内容であった。

ベイカーはイタリア人のファンからは「ランジェロ(天使)」あるいは「トロンパ・ドーロ(黄金のトランぺッター)」と呼ばれたほどであったというが、彼の葬儀に参加したのはわずか35人だったという。アムステルダムで謎の死をとげるが、その死因は自殺とも他殺とも言われ、未だに明らかにされていない。

麻薬、家族への暴力、浮気、喧嘩と様々な悪行を果たしながらも、トランペットだけは彼を裏切らなかった。その音色とアドリブの発想の豊かさは、すでにジャズトランペットの古典となったと言っていい。並外れた才能を持つ者の宿命だろうか、普通の生活とは縁がなかった。

私は特に彼の演奏に興味をもつので、この著書は当面読むことをやめて、本書の最後に掲載されたおよそ170枚のディスコグラフィーをもとに、彼の演奏をなるべく多く、鑑賞することにしたい。
by kurarc | 2014-06-09 21:02 | trumpet