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井泉文化

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三浦朱門著の『武蔵野ものがたり』を読んだが、この著書で気づかされたことがある。それは、武蔵野といわれた地域は水に乏しかったということである。さらに、東京都心(かつての江戸)もしかり。そうでなければ、玉川上水や品川用水などの土木工事は必要がなかったはずである。こうした水は主に飲料水(あるいは農業用水)として供給された。

『武蔵野ものがたり』によれば、玉川上水を運河のようなものと考え、船で江戸を行き来することが試されたこともあったというが、3年で打ち切られたという。飲料水であった玉川上水の管理に御上は厳しく、船にトイレを設置することなど規制が厳しかったかららしい。

このような文章を読んでいると、昔、実家の隣のアパートに設置されていた共同の水場を思い出した。ここには井戸があり、この井戸水を遊び疲れるとよく飲んでいた。ここだけではなく、思い出すと自宅の廻りにはあちこちに井戸がめぐらされていた。武蔵野といわれた地域は、大きな川はないが、湧水にはめぐまれていたから、井戸を堀り、この水を飲料水として利用する習慣は古代の頃から(あるいは旧石器時代から)さかんだったのではないか?

井の頭のような湧水地は貴重だっただろうし、「ハケ」といわれる崖地でありながら水の湧き出るような土地に人が住みついたのも当然のことであったのだろう。

三鷹の周辺で庭をもつような住宅に住んでいるのであれば、井戸を掘っておくことは万が一に備えるためにも懸命であろう。水不足に悩む沖縄のような地域には、村落の共同井戸である村井(ムラガー)という井戸があるし(上写真:沖縄の湧水 ヒージャーガー)、あるいはインドでステップウェルという階段状の井戸など、建築的にみてもすばらしい井泉文化がアジアには数多くある。アジアに限らず、著名な都市には、かならず水にまつわる建築物が存在する。温暖化がこのまま進行したとき、玉川上水も再び飲料水の役目を負う日がくるのかもしれないし、むしろ、いつでも飲料化できる状態に維持することこそ重要であろう。

*インドのステップウェルについては、沖縄在住時にお世話になった建築家末吉栄三さんが、すばらしい文章を書いている。その文章はこちらから
by kurarc | 2014-06-28 22:52 | nature