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小説の中の窓、映画の中の窓

ポプラ社、百年文庫26『窓』の中に収録されているピランデッロの短編「よその家の明かり」を読む。この平凡なタイトルからは想像もつかない展開に驚いたが、この小説を読みながら、映画『仕立て屋の恋』を思い出した。中年男の滑稽な恋愛を描いた映画であったが、この両方に共通しているのは、窓からみえる隣人の姿であり、その隣人の女性に恋をしてしまう、ということである。

ヒッチコックの映画『裏窓』も窓からの眺めを主題とした映画であった。小津安二郎の映画をみていると、窓が開放された状態で描かれることが多く、隣の家の様子が何気なく映されているシーンをよくみかける。

たとえば、ヨーロッパの住宅は厚い壁でできているが、実は外部の街路や隣家に対して開放的なつくりが多い。以前宿泊したパリのホテルの一室は中庭に面していて、隣の家で勉強する若者の姿を望むことができたし、街路に歩く人と住宅にいる人がコミュニケーションする姿をよく見かける。外部(街路)はいわば舞台や劇場のような機能を持ち、それを家という客席からながめるような感覚である。

東京のような都会においても40年くらい前までは、同じであったと思う。わたしの実家の台所は、隣の家の台所と向かい合っていて、よく隣の家から包丁の音が聞こえてきたし、会話もできた。路地も健在であった。しかし、高度成長がはじまり、そうした開放性は減少していき、閉鎖的になっていった。

「窓」という建築のエレメントの一つを、小説や映画でどのように描き、扱っているのかについて体系的に調べてみると、興味深いように思える。それは建築と都市について明らかにされると同時に、様々な国の文化やコミュニケーションのあり方まで明らかになってくるのではないだろうか。
by kurarc | 2015-01-12 21:04 | books