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”Are de Vivre” パリのアパルトマンと48年法から

わたしはほとんど建築専門雑誌は見ない。そのかわりに、建築専門外の人が編集したような住宅に関する本はたまに眺める。建築の専門雑誌はかなり偏りがあり、大半の建築、特に住宅については、このようなところに住めるのか、とおもわせるような怪しいものが多いからである。

にむらじゅんこ著の『ふだん着のパリ住まい』という本を最近購入した。(いつも古本で手に入れる)パリのアパルトマンを集めた解説入りの写真集である。建築専門雑誌よりもこうした使い手の生活感があらわれている本の方がおもしろいし、ずっと想像力をかきたてられる。

にしむら氏が選択しているのは、何となく選んだものではない。様々なケースがわかるようにアパルトマンの選定に気を使っている。そして、紹介されるアパルトマンの中には、ジャン・プルーヴェのデザインした住宅に住んだ経験があるような女性のアパルトマンもなにげなく紹介されたりしていて、生活することを楽しんでいる様が写真からあふれ出ていることがわかる。建築雑誌の中に出てくる何もない空間、こぎれいな空間の写真とはかけ離れている。

パリには48年法(ロワ・キャラン・チュイット)という住宅法がある、とコラム欄に解説があった。1948年9月以前に建設されたアパルトマンの家賃は、居住面積によって決定され、賃貸期間は基本的に無期限なのだという。こうした物件はやすく借りることができ、家賃の上昇率も年に数パーセント未満と決められていることから、安心して居住し続けることができる法律であるということがわかる。こうした法もあって、パリ市民は新しさを求めなければ、かなり落ち着いた生活を営むことができ、そのインテリアについても個性を発揮できるのだろう。

"Are de Vivre"(アール・ドゥ・ヴィーヴル)というフランス語は、フランスの生活を語るときにかかせないキーワードである、とも書かれている。日本語では「生活芸術」と訳されるとのことだが、「日常生活のなかに芸術は生きている」と解釈されるのだとか。こうした言葉は日本人にもよく理解できる概念だろう。但し、決して「民芸」的な感性でないことは言うまでもない。

建築(住まい)は、にしむら氏も言うように、刹那的な感性ではなく、末永くつきあわなければならない最も大切な空間となるのだから、真のセンス、永続性が求められる。こうした空間を個性をもってつくること、そのお手伝いをすることがわたしの建築家としてのスタイルなのだと思う。
by kurarc | 2015-01-19 21:19 | archi-works