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侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督 映画『悲情城市』再び 

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映画『悲情城市』を久しぶりに鑑賞する。先日みた『恋恋風塵』と比較してみると、やはりかなり性格の異なる映画であることがわかる。

侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督によれば、映画『悲情城市』以前には個人的な体験をモチーフにした映画をつくってきたが、この映画『悲情城市』によって、初めて自分の経験したことのない時代、歴史を描いた、と語っている。それは彼にとって映画をつくることのターニングポイントになったと。

はじめに歴史から、後に歴史から遠ざかる映画を撮影したアンゲロプロス監督のようなプロセスとは異なり、むしろ、素直なつくりかたと言えるだろう。台湾における2.28事件を題材にしたこの映画は、撮影当時、まだ台湾には戒厳令がしかれていたが、ちょうど映画の公開の頃、その戒厳令が解かれ、この映画は台湾の人々のみならず、全世界に支持されることとなった。わたしが旅した頃の台湾は、まだ戒厳令下であったことを改めて気づかされた。

『恋恋風塵』のピュアな感覚とは異なり、台湾の現代史を見つめ直おすこと、その時代を主題とすることによって映画をさらに普遍的なものにしていこうとする侯孝賢監督の意志がよく伝わる。しかし、今改めてみてみると、むしろ『恋恋風塵』の方がファンが多いかもしれないと感じられた。

トニー・レオンというスターを起用したのも、映画を世界に向けて発信するためであったが、やはり彼の立ち位置が少し映画とずれているように感じられなくもない。しかし、その微妙な立ち位置をうまく微調整しているのが、『恋恋風塵』でも起用された女優の辛樹芬(シン・シューフェン)であろう。侯孝賢の世界を体現しているようなオーラが彼女には感じられるのである。この映画の時に彼女はすでに結婚していて、アメリカ住まいだったというが、この映画のために母国に帰り、撮影に参加したのだという。

日本の現代史を知る意味においても、映画『悲情城市』は見落とすことのできない作品である。1980年代後半はこの映画といい、『ベルリン 天使の詩』といい、優れた映画が多い。やはりこの頃が20世紀を冷静に俯瞰できる余裕のできた時代であったのだろう。
by kurarc | 2015-01-25 00:08