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映画『過去をもつ愛情(原題 Les Amants du Tage) 』

以前からずっと気になっていた映画に『過去をもつ愛情』という1954年の映画がある。舞台はリスボン(一時、ナザレが登場する)。ネット上でおおよそのあらすじは理解していたが、その映像表現がどのようなものであるか、また、リスボンという都市がどのように描かれているのか、興味があったのである。また、現在75歳を超えているような方で、映画好きの方から何人かに、この映画が印象深かったという話しを聞いていたことも、この映画に興味をいだかせた。

そして、この映画をやっとVHSビデオでみることができ、非常に感銘を受けた。まず、今までみた映画の中で、これほどリスボンという都市の魅力(ナザレを舞台にしている場面では大西洋の魅力)を余すことなく描いている映画をみたことがないという点、また、ファドの女王アマリア・ロドリゲスがファディスタとして、また、女優として登場すること、さらに、ヒロインのフランソワーズ・アルヌールの好演、ミシェル・ルグランがファドをアレンジし、映画音楽としていること・・・etc.あげれば切りがない。

秀逸なのは、それだけではない。この映画の原題は直訳すると『テージョ河の恋人たち』といった訳になるが、これを映画の内容を踏まえた意訳として『過去をもつ愛情』というタイトルをつけたのも的確と言わざるを得ない。この映画は、ある男女が同じような過去の傷をもつことで互いに引かれていく映画であるが、その過去と現在の愛情の交錯が主題となっている。よって、「過去をもつ愛情」という表現はこの映画の主題を端的に表現しきっている。

それにしても、わたしが初めて訪れた1984年のリスボンの30年前に公開された映画だが、その情景はそれほど変化が感じられなかった。リスボンは、映画『白い町で』のなかで登場した逆に回転する時計の針のように、時が進むことのない都市なのかもしれない。(この時計は鏡で映った時をみるためにつくられたようだが、リスボンでは、この時計を直視することが望ましい。わたしも、リスボンでこのような逆転する時計をみた。)

*これはあくまで仮説だが、建築家の篠原一男さんが、初めての海外旅行先にポルトガルを含めていたのは、この映画の影響なのではないか?と想像しているのだが・・・
by kurarc | 2015-03-02 21:01 | cinema