避難階段

最近、高層建築の火災事故がよく報道される。高層建築の住人たちは、その場合、屋内避難階段、または、屋外避難階段を降りることで、下階に避難していく。高層建築である場合、階段を下りるという反復移動は想像をはるかに超える苦痛を伴う。(屋上に避難することも考えられるので、もちろん、階段を昇るという移動も同様である。)

ここで、われわれのような建築設計者が気をつけなければならないのは、階段のデザインである。高度成長期に建設されたマンションには屋外避難階段を螺旋階段にデザインしているものをよく見かける。しかし、考えてみればわかることだが、地上10数階からこの螺旋階段を降りていくと当然目が回ってしまう。螺旋階段はせいぜい3階〜5階くらいが限度である。円形の螺旋階段だけでなく、正方形上にデザインされた螺旋階段も同様のことが言える。

正方形上の螺旋階段(各コーナーに踊り場があるタイプ)を昇ったり、降りたりしたことのある方ならわかるが、人間が螺旋状に移動する運動に対して、正方形というかたちを与えているため、非常に昇りづらく、降りづらい。正方形上の螺旋階段は、回転していく足の運動に対し、階段は直線上に配列されることになるので、足が踏み面に安定して乗らないのである。

われわれ建築家やデザイナーは、こうした緊急時に使用されるような階段を観念的にデザインすると、いざというときに迷惑をかけてしまいかねない。現在、階段の基本は、通常のビルであれば、中間に踊り場を設けて直進する昇り、降り、または、われわれが「行って来い階段」と呼ぶ、踊り場を介して180度回る階段である。こうした階段であれば、避難階段として大きな問題になることはない。

デザインをするときには、具体的に様々な行為、事象を想像しながら行われなければならない。デザインで遊んでよいところは、いざという時に人の行動に不都合が起こることのないような場所を選定した上でなされるべきである。

*東京都条例では、直通階段を螺旋階段とすることを禁止している。
by kurarc | 2015-03-03 21:13 | archi-works