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金 大偉監督 映画『花の億土へ』 石牟礼道子の世界

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3.11にふさわしい映画をみてきた。江古田映画祭で上映された映画『花の億土へ』である。出演するのは、あの『苦海浄土』の作家、石牟礼道子。彼女のインタビューを映像化したものである。

撮影がはじまったのが2010年であったが、ちょうど東日本大震災に遭遇したために、大幅に内容を変更してこの映画が完成したのだという。

改めて石牟礼は、水俣病からフクシマまでの経験から、彼女の言葉を紡ぎだしていた。彼女自身、「わたしはシャーマンである」ということを言っている、と監督の金氏は言っていた(金監督は、会場に来場した)が、わたしも彼女の言葉を聞きながら、「巫女」のような女性だな、と思いながら映像をみていた。

彼女の言葉が興味深いのは、具体的な経験から(彼女は実際、われわれが経験することのない経験をしていることがよくわかった)、あるいは地の底から紡ぎ出されたかのような表現であること。それは、多くの人が感じられるように、映像や音(音楽)が感じられる言葉である。アニミズムの思考にも通じるその言葉の中で、「人類」という言葉ではなく、「生類」という言葉を使う石牟礼に、その考えがよく現れていた。

石牟礼が豊饒な言葉を紡ぎだす背景には、彼女の育った水俣や彼女のルーツである天草、あるいは広く九州の風土がある、と思われる。その九州の神話的世界に子供の頃からふれていたのである。石牟礼は、子供の頃、狐になりたかったと語る。そして、狐の鳴き声を真似しては、自分に尻尾がはえてくればよいのにと遊んでいたという。また、人身供養(人柱)の物語についても語っていたが、そうした民俗学的な世界が彼女のまわりにはあふれていたのである。

石牟礼によれば現在の日本は、解体から再生へと歩み始めたのだという。「甦り」が果たして可能なのかどうか、今、日本人が試されているのだという。
by kurarc | 2015-03-11 22:42 | cinema