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本がおもしろくなってきた

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最近、本の編集技術が深化し、新書にかわる様々な企画の本が出版されるようになってきた。新書版による様々な企画が一時、書店にあふれだしたが、その動きが一段落したこともあるだろう。出版業界はまた新たな戦略にのりだしたものと思われる。

その中でも、最近読んだものでおもしろい企画と思われたのは、たとえば、ポプラ社の「百年文庫」というシリーズである。以前もこのブログで紹介したが、タイトルに一つの漢字を割り当て主題とし、その中に3人の作家を選び出し、あまりなじみのない作品を選定することで、本として新鮮さをデザイン、編集しているものである。『窓』という百年文庫26にあたる企画では、遠藤周作、ピランデルロ、神西清が組み合わされている。

また、みすず書房の「理想の教室」シリーズでは、それぞれの専門家が特別に講義を行ってくれるような企画であり、わたしが読んだ加藤幹郎著の『ヒッチコック『裏窓』 ミステリの映画学』においては、ヒッチコックという映画作家のイギリス時代からアメリカ、ハリウッド時代までの映画の俯瞰を行うとともに、映画『裏窓』がヒッチコック映画の中で、現代映画の出発点といえる記念碑的映画であり、ヒッチコックの特にアメリカ時代の映画が、ヌーヴェル・ヴァーグの作家たちに多大な影響(古典的ハリウッド映画の脱構築)を与えたことを見事に分析してくれている。

版型も新書版を一回り大きくしたものであり、手になじみやすく、携帯にも不自由しないし、読みやすい。こうした企画からもわかるように、現代は、ある評価の定まった古典といわれる書物やテーマ、芸術作品などを編集、再評価、再構築して、マスメディアの中で慣習化された評価を脱構築し、現代の中に蘇生させるような知性が求められている時代と言えそうである。

*ピランデルロはわたしにとって重要な作家である。映画『カオス・シチリア物語』の原作者であることがまず一つ、映画監督エリック・ロメールの『六つの本 心の話』は、ピランデルロの戯曲『作者を殺す六人の登場人物』からヒントを得たものであることを最近知った。不思議だが、何かにつけて彼の名前がついてくる。愛読書、花田清輝の『復興期の精神』にも「ユートピアの誕生ーモーア」に登場する。
by kurarc | 2015-03-18 14:10 | books