映画『白い町で』再見

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映画『白い町で』(1983)を久しぶりにみる。15年ぶりくらいになるかもしれない。監督はスイス人、アラン・タネール。彼の映画は、この他には『レクイエム』をみている。両方ともポルトガル、リスボンを舞台にした映画。特に、この『白い町で』は、私が初めてリスボンを訪れた頃に撮影された映画である。

この映画の初めに、あるバルの中の逆回りの壁掛け時計が登場する。

「その時計、逆に進んでいる」
「正しく進んでいるわ」
「逆なのは世界の方よ」

といった、なにげない会話がかわされるが、このシーンが印象的で、1995年に再びリスボンに行ったとき、入ったバルの壁を見ると、同じような逆回りの時計に出会い、驚いたことがある。

この映画『白い町で』の「白い」とは、街の色を表現しているのではない。リスボンを訪れるとわかるが、決してギリシアのミコノス島やサントリニ島のように「白い」街ではない。映画の中で語られるように、それはある意識を表現している色である。その意識がこの映画のテーマといってよいだろう。

それでは、そのテーマとは何か?それは映画をみていただくしかないが、一つは「孤独」であろう。もう一つは「不条理」といったところだろうか。もちろん、これだけではない。この映画は万人がみて楽しい映画ではない。見終わったあとの感触もあまり心地よいものではないが、こうした意識を表現したという点では、特出すべき映画である。その舞台となったリスボンは、未だEUに加盟する以前の混沌とした都市であり、その様相が映画のテーマとうまくからみ合っている。

先日紹介した『過去をもつ愛情』以上にリスボンという都市が巧みに描かれていることも記しておこう。
by kurarc | 2015-03-24 23:44 | cinema