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映画『幸せのありか』を観る

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下高井戸シネマにて、映画『幸せのありか』を観る。またまたポーランド映画である。このブログでたびたび昨今のポーランド映画の質の高さについて書いているが、この映画にも打ちのめされた。

この映画は、生まれつきの脳性マヒ(知的障害をもつと思われていた)のマテウシュという青年が、絵文字ブリスシンボルを学び、コミュニケーションが可能となるまでの波乱の人生を描いたもの。実在の人物をモデルとしている映画でもある。映画のラストでそのモデルとなった本人とマテウシュを演じたダヴィド・オグロドニクが会話している映像が映される。

まずは、マテウシュを演じたダヴィド・オグロドニクの演技が圧巻であった。立って歩くことができず、床に背中をこすりつけながら移動するマテウシュの「歩き方」を演じるオグロドニクの演技は真に実在の本人がのりうつったかのようであった。

この映画の普遍性は、むしろ知的障害者に対する我々の接し方を教えるということだけではない。知的障害者として決めつけ、会話しても無駄であると勝手に思い接してきた健常者の偏見に対する告発なのである。人はすぐに他人、特に弱者に対してレッテルを貼りたがる。そのことに対する猛烈なアンチテーゼを突きつけた映画なのである。

わたしはこの映画を身をもってみなければならない立場にある。わたしの従兄がこうした脳性マヒ(後天的)であるからである。わたしは彼とちゃんと会話しようとしたことがあったのか、わたしは彼に何をしてあげたことがあったのだろうかと思っても、何も出てこないのである。彼はもちろん現在健在である。わたしにできることをこれから探さなければならない。

最近のポーランド映画の傾向は、こうした周辺に追いやられている人々、マージナルな文化を積極的に取り上げて映画の題材にしている点があげられる。こうしたテーマはへたをすると押し付けがましい教条主義や教科書的、道徳的になりがちなテーマであるが、その辺りをうまく映画として魅力のある構成に仕上げるバランスの良さがポーランド映画の最大の醍醐味であろうか。

今後もポーランド映画から目が離せなくなりそうである。
by kurarc | 2015-05-03 19:32 | cinema